第81話 国名を決めよう。 その1

 帰ってすぐに、佐藤君の所へ行く。

 共同の水場に、26℃~30℃でコントロールできる。

 暗いボックスを、作成してもらう。


 そこに、籠を押し込んだ後。

 村長の所へ行き。村? 国の名前決定の依頼と、ウナギの放流について、相談をしに行く。


「どう思う?」

 いきなり、村長は俺に話を振って来る。


「女神は、ある程度地球の環境に、そろえているように思います。川へ行って原種が居ないか。探してみましょうか?」

「それも。そうだな」


「すでにウナギが来ているので、急がないといけません。籠を作って、沈めてみます」

 そう言って、出ようとすると、呼び止められる。


「国名は?」

「はじめての国でもいいですが、宴会要件ですね」

「分かった。通知しておく」

 この前作った、通信魔道具を利用した、村用の放送設備があるから。

 何とかなるだろう。


 記憶をもとに、ウナギ捕獲用罠籠を作る。

 構造は、筒と、入れば出れないように斜めにした竹を、口は広く奥が狭くなるように取り付ける。


 この罠部分は、取り外せるようにして、ひもで結ぶ。

 奥には、針金でミミズを付け、もう一つには切り身を付けた。その2種類を、5セット作り、海側から場所を移動しながら設置する。

 かごには、流れないよう。口側におもりを付けて沈めた。

 当然、籠は紐で陸側から、引き上げることができる。


 これで、明日まで置けば、大丈夫だろう。



 その晩宴会をしながら、魚介類の輸出と、ウナギとかの放流。

 国としての、名前を考えようとなった。

「放流は、良いんじゃないか?」

「異議なし」

 即決だった。


 だが国名は。

「やっぱり。はじまりは、入れないとだめだろう」

「そうだよ。すべては、ここから始まったんだ」

「いや。村の名前じゃなくて、国の名前だよ」

 徐々に、怪しくなっていく。


「ニュージャパンは?」

「火事になるぞ」

「ここも、日本で良いじゃないか?」

「対外的には、日本なら問題になりにくいが。つまらんな」

「新日本はどうだ?」

「追悼かよ。みんな実は、年寄りばかりだろう?」

 ワイワイと盛り上がり。


 酔っ払いが増えた結果。さらに意味不明になっていく。


「神国。ここは死国。神州とか厨極地方とか。九州は修羅の国でいいや」

「やめい。とんでもなく危ない所に聞こえる。厨極地方なんか、津軽以上に言葉が通じなさそうだ」


「裏日本」

「気が狂いそうな、生物が居そうだ」


「もう一つの日本」

「真日本」

「邪馬台国」

「大和の国」

「和国」

「秋里さんか? ともい。面白かったな」


「それなら、村長。山瀬の国だろ」

「わしは村長で十分じゃ。実際ここまで大きくしたのは、佐藤君じゃから。佐藤の国とかどうじゃ」

 脇で聞いていて、「却下します」とだけ答える。

 そんな名前を付けたら、米の出荷ができなくなる。


「希望の国とかどう?」

「どこかの、年寄り向け療養所にありそうだ。あながち間違っちゃいないが」

「違いない」


「なんか。ぴんと来ないな? だれか、良いのないか?」

「もう。希望を持って、人生のやり直しする国。再出発の意味を踏まえて、日出ずる国。英語名Nihonにしよう。俺は、昔から。英語名ジャパンが、なんだか、ぴんと来なかったんだよ」


「それは、英語習った時に。皆考えたんじゃないか?」

「英語の先生に聞いたら、歴史の先生に聞けって、返ってくる奴だな」

「それなら、国名日本で良いじゃないか。日出ずる国でNihonの方が困らないか?」

「そこはほれ。略称で日本と読むと言う事で」


「イギリスかよ。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の何処を取ったらイギリスになるのか分からん」

「あれは日本人だけらしいぞ。日本のジャパンとかジャポン。ハポンとかと同じ聞き間違えからの定着。ポルトガル語やオランダ語からの聞き間違いとかが、あったらしい。イギリスのことを、エゲレスと呼んで、それがなまったみたいだぜ」

「ああ。爺さんたちが、エゲレスさんって言っていたなあ」


「仕方が無い。間を取って、日本と書いてにっぽん。英語名もNipponだな」

「どこと、どこの間だよ」





 神地さんが。すすすと寄って来た。

 今回奥さんを連れて来て。ウナギを運んで、疲れた所で。

 家に、ねねさんが居るのを見られ。

 正座させられて、いたはずだが。


「盛り上がって楽しそうだけど。佐藤君に、お願いがあるのさ」

「何でしょう?」

「君。魔道具を創るの。得意じゃない。手伝ってくれない? ……いや手伝って。お願い」

 悲壮な顔をして、懇願状態。


「日本からの依頼でね。ここと日本を、繋ぐための魔道具が欲しいと言う事なんだ。まあ、うちの場合。精霊との盟約で、子供に力を貸してくれることにはなっているけれど。ここに、つなぐことが出来るかどうかは、分からないでしょ。計画として、色々なことが走り始めた以上。途中で行けなくなったと言うのは、まずいどころじゃないからね。特に発電機。基本インフラだからね」


 少し考える。

「それで、その道具を作るのは良いですけれど。俺もまだ、日本へつなぐ力が、ありませんよ」

 不安な部分を、聞いてみる。


「君。ねねの村に、通信用魔道具を置いていたでしょ。あれの形で、行けると思うんだ。精霊からも、大丈夫でしょとは聞いているから」

「後は、消費魔力ですか?」


「それも、向こう側のゲートに、魔石タイプの通信用魔道具を付けておけば、必要な時には。こちら側で開けばいい。ある程度の抑止力として、何かあったら、開かないと言う事も言える」


「製品名。天の岩戸にしましょうか?」

「開くには、門の前で踊ってもらうのか?」

 そう言って、二人で笑ってしまった。

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