第62話 練習と来訪者

 まずは近くの場所で、イメージをする。

 空間を繋ぐ? どうすればいい? この前貰った精霊のかけらに問いかける。


〈どう繋ぐのかを考えて〉

「どう繋ぐ? そりゃあ、こうやって。向こうとこっちを、ペタッと」

 やった瞬間。何かが爆発した。


「今のは何だ?」

〈連続した空間じゃなくて、周りにある空気を近づけたから、ボンてなっちゃった〉

「空気を圧縮したのか。そりゃ爆発するわ」


 そう言えば、あの黒い渦は、何だろう?


「あの神地さんが使っていた、黒い渦は何?」

〈あれが、空間の接続部分。中はちょっとだけ、行人の世界〉

「はい? 行人さんの世界」

〈そう。此処の世界と、向こうの世界を、自分の世界でつなぐの〉

「そうなんだ…… てっ、できるか、そんなもの。だが理屈は分かった。気がする」

 そもそも、自分の空間を何とかしないと話にならない。


 先に、アイテムボックスが先か。


 今度は、空間で悩む。

 火を使うとか、水を使う、電気その他もろもろ。魔法だと思っても、そんなに悩まなかったし、すぐ使えた。


 だけど、空間とは何だろう?


「普人どうしたの? どら焼きを食べようとしたら、中に餡が入っていなかったみたいな変な顔をしているわよ」

 通りすがりの、香織がそんな変なことを言ってきた。

「どんな顔だよ」


 そうか、自分の魔法で中身を作ればいい。魔素をつぎ込み。魔法へと変換をする。

 良し出来た。真空の玉が。


「なあ、別の空間て、どうすれば作れるの?」

〈どんなのが要るの?〉

「まずは、独立した空間で、物を入れられるようにして、中に入っている物が分かればいいな」

〈みんなが欲しがる、亜空間収納庫だね。はい。できたよ〉

「はい?」

〈うんできたよ。欲しかったのでしょう?〉

「なんで、そんなに簡単にできるの?」

〈僕は空間にかかわることができる。精霊と呼ばれるもの。もっと力がついて、普人となじめば、阿吽の感じで僕の力を使うことができる〉


「ひょっとして、魔法と違うのでは? 精霊にお願いをする? よくある、精霊魔法ではないか?」

 そこで初めて、周りでうろうろしている妖精や精霊に聞いてみる。


「もしかして、お願いをすれば、火を起こしたり水を出したりしてくれたのかな」

〈別のことでは、普人のお手伝いをしていたじゃない。見張りをして教えるとか。言ってくれれば、お手伝いをするよ〉


 お手伝い。お手伝いに騙された。いや勘違いをしていたのは自分か。

 ひょっとして、お願いすれば、魔法の必要など、なかったのではないだろうか。

〈うん。お手伝いをするよ。魔力を、ちょっともらうけれど〉


「わかったよ、よろしくね。それで、ここから、あそこの岩があるところまで空間を繋げる事はできるのかな」

〈繋げるよ〉

 目の前にできた、黒い渦。

 思わず、膝をついてしまった。


 ちなみに、地球へ繋ぐのは、今の精霊では、力不足だそうだ。

 もう少し頻繁にお願いをして、魔力をあげればいいらしい。



 まあ。亜空間収納庫は便利だった。

 これは、冷えたままでとか、こっちは暖かいままでとか、お願いができる。

 時間を止めるには、時を司る精霊が必要だそうだ。


 精霊って、現象すべてに居るんじゃないか? 日本の八百万の神というのは本当だったのか?


 その後。訓練をして、ついに。ねねの村までなら、繋ぐことができるようになった。

 先はまだまだ、遠そうだ。


 神地さんは、精霊の力を完全に受けていないときでも、色々な世界へ繋ぐことができたと言っていた。それを考えれば、資質というか、魔法の能力も必要なのではないかと考えてしまう。



 日々そんなことをしていると、神地さんがやって来た。


 3人ほど、見たことない。スーツを着た人間達を連れて。

 年を取っているから、転移者でも当然なさそうだ。


「こんにちは。佐藤さん」

「神地さん。うちの人間が、色々と起こしたようで。お手数をおかけしました」

「いえいえ。連続殺人犯を捕まえるきっかけになりましたし、犠牲者も発見することができました。こちらが、お礼を申し上げます」

 そう言って、ちょっとがっしりした体格の人が、頭を下げてきた。


「詳しい話は、村長の家で伺いましょう」

 そう言って、4人を連れて、村を案内をする。


「村長。お客さんです」


「ようこそ、はじめてのむらへ」

 そう言って、村長が頭を下げる。

 こちら側の4人も、頭を下げる。

 家へ入り。囲炉裏のある座敷で、車座に座る。


「この村の村長を、務めさせていただいています。山瀬です」

 神地さんが、がっしりとした人から。という感じで促す。


「私は、警察関係で詳細な所属は言えませんが、田口と申します」

 次は、少し疲れている方。

「私は、まあ厚労省の人間で。国見と申します」

 最後に、ちょっと気難しそうな方。

「私は、法律関係です。溝口と申します」


「と、言うことは、村人のリストでも。御作りになるのでしょうか?」

 皆が、おっという顔をする。

「この格好だとあれですが。実年齢はもう、90歳近くになりますから。多少は見えますので」

 村長の年を初めて知った。

 そういえば、村の慰安旅行で事故をしたのだったな。


「それなら話が早い。前回の帰還者のおかげで、埋もれるはずだった事件が明るみになり。国としては、ほかにもそのような方。もしくは、行方不明者がおられるのではないかと思いまして。私たちが、急遽遣わされました」

 村長は、少し笑みを浮かべて、

「ついでに。村と住人の様子を、見て来いと言う事でしょうか?」


 3人は、顔を見合わせる。

「ええまあ。端的に言えばそうです。先日、神地様からお話のあった、資源のことも含めて。見学をさせていただければ、幸いです。決して、そちらに対して、不都合の強要とか。そのような意思はありません。あれば、神地様が協力をしないと、おっしゃっていますので」


「そうですか。それは良かった」

 村長は、にこやかに笑い。

「じゃ後は、佐藤君任せたよ」

 そう宣言をする。


「えっ?」

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