第28話 村で、初めての夜
晩御飯は、普人の手作りだった。
最初。ここへ来た時に、竈でご飯を炊けるのが、普人だけだったらしく。その時から普人が作っているらしい。
完全和風というわけでもなく。時にパスタなども混ざるらしい。
今日は小鯛の焼き物と、フキやジャガイモの煮物。タラの芽のてんぷらとかも作られていた。それに、みそ汁と、ごはん。
完全に負けてるというか。ここで、一番役に立たないのは絶対私だ。
学校での勉強が……。
どこかで役に立つかもしれないけれど。そんなもの、隆君以外に勝てる気がしない。
ううっ。ご飯がおいしいよ。お米が違うのか、おかまで炊いたせいなのかわからないけれど。おいしいの。
当然おかずも、おいしいの。水のせいかしら。
そんなこんなで、感動をしながらご飯を食べる。
お風呂へ行くと、どこかの旅館にありそうな、立派な木の桶。
大きなのがドドンと置いてあった。
最初に来た時には、水の入った瓶が、お風呂だったと言っていた。
灯りも、今は魔道具で明るいけれど、最初はろうそくも無くって。真っ暗だったようだ。
すべて、この1年で、劇的に変わったらしい。
体を洗うスポンジも、へちまだって言っていたわよね。
すごいな。
そういえば、まだ平均にこだわっているのかしら。この事を私が知っているということは、ノートを読んだという事。嫌がるのかな?
などと考えながら、お風呂から出てくる。
結構涼しいのに、いつまでも体がポカポカしている。
台所では、普人君がお皿を洗って、それを、川瀬さんと広瀬さんが拭いて片づけをしていた。
長瀬さんと瀬尾さん。それと隆君が、余ったご飯を丸めて伸ばして、巻きすに乗せていっている? 大きいから、すだれというんだろうか?
「お先に頂きました。それは何をしているんですか?」
「ああ、お帰りなさい。これはね余ったご飯を少しついて伸ばして乾燥させて、3日後くらいに焼くと、おせんべいになるの。保存食ね」
「すぐ食べるから、保存になっていないじゃない」
瀬尾さんが突っ込む。
「だって、ほかにお菓子というと飴じゃない」
「ねえ、今度ポテチ作ってよ」
長瀬さんが、普人君に言う。
「室にジャガイモあるから、自由に作っていいですよ」
「えー。作ってもらったほうが、おいしいのに」
甘えた感じで、長瀬さんが答える。その自然な姿が、もう本当に家族なんだと実感する。なんだか、やっぱり悔しい。
「ポテチは作りませんけど、フライドポテトと明日の朝用に、ポテサラは作りましょうか?」
「うー、後でつまみにする」
「じゃあ。先にお風呂ですね。行ってらっしゃい」
「ほーい。かなちゃん佳代ちゃん。行こう」
「仕様が無い。行くか」
ぞろぞろと、風呂場へ行くみんな。
「あれ、川瀬さんは良いんですか」
私が聞くとすでに、フライドポテトを咥えていたらしく、ハフハフ言いながら答えてきた。
「これが終わったら、入るからいいのよ。はい。これつぶして。ざっくりで良いから」
ジャガイモをゆでたものが、大きな器に入ってやって来た。
ジャガイモを、半殺し位でとどめて、「できました」と持っていく。
「はい。あーん」
普人くんがそう言って、ポテチをくれた。
「熱っ」
「出来立てポテチ。どう?」
「初めて出来立て食べたけど、おいしい」
そう言うと、うんうんと頷いてくれた。
「だから、みんな食べだすと止まらなくてね。危険食物なんだ」
「よし、混ぜた。粗熱取るまで置いといて。ポテチとフライドポテト。食べてもいいけど残しておいてね。よし、隆行こう」
「うん」
隆君と行っちゃった。
「これ、薄目だから」
と言って、川瀬さんが湯飲みに何かをくれた? 甘酒?
でも、ポテチと合う。おいし。
そうすると、すぐに先に行った3人が帰ってきて、ポテチを見つけた。
「やった。チューハイ作ろう」
みんなが、台所へ走る。
炭酸水サーバは、少し前に作ったものだ。炭酸のガスボンベさえ作れば精霊にお願いして塩水を電気分解をして陽極から塩素ガスが発生するので、それを水に溶かして、それでカルストからとって来た炭酸カルシウムと反応させて炭酸ガスを発生させる。そいつを一気に圧縮して液化させた。
危険なので、専用の実験室まで作って作成した。
危険だけど、皆から要望が多かったのよ。ものすごく。
いろんなシロップは、作り置きがあって、それと炭酸水と焼酎。
みんな、それぞれ好みがあるようだ。
そうしていると、普人くんたちが帰って来た。
3人で。
……ひょっとして、お風呂って一緒に入っているの?
そんなことを思いながら、もやもやしていたが、ポテチのおかげで一気に酒盛り兼、私の歓迎会となった。
そうすると、また姿が消えたと思ったら。ポテチのお替りと鶏肉のから揚げが出てきた。何の鳥かは聞けなかった。来た時に周りを走り回っていたもの。
これも、すごくおいしかったの。
ゆずポン酢と、塩どっちもおいしかった。
そこまで来て、やっと収納庫では無く、冷蔵庫があることに気が付いた。
思ったより、発展していたようだ。
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