聖女の営む葬儀屋さん
もなき
第1話 プロローグ
この街には、風変わりなお店が1軒ある。
木造が主流の中、グレーの石造りの建造物というだけですでに悪目立ちをしているが、風変わりなのはそれだけではない。
ここで店を営んでいる店主は、いつも全身黒づくめの服を見に纏い、レースの手袋をはめ、頭には目元を覆う程のベールの付いたベレー帽を被っているという。
この国では一般的に衣服に黒を用いるのは、目立たず影に控える執事やメイドに限られる。彼女は決してそういった立場ではない。
彼女の仕事をこの国に存在する中で表すのなら1番近いのは牧師だろうが、牧師というのとも少し、いや、大分違う。
彼女は自らの店を葬儀屋と言う。
この国には全く馴染みのない言葉だ。だから彼女の店を説明する時には、皆困りながらこう言う。
"教会のような所"と。
それは彼女の能力も相まっての事だろう。
その店主というのが、どうやら聖女らしいのだ。
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