第3話
確かに直人に言われるまで特に考えなかったが新歓で紹介しなかったからと言って部活がないわけではない。だが勧誘のチラシや資料をもらった覚えがなかった。
しかし、どういう活動内容なのか場所はどこなのか考えを巡らしていた。
家庭科部というのだから安直に考えると家庭科室で行っているのか。それよりも部活内容が判然としない。料理作って食べあってお終い?なんだか味気ないなと理央は思った。
母の雅子に息子の高校生活に気をかけさせるのも忍びないという思いもあり、どんな活動をしているのかだけでも情報収集してみようかと考えていた。
1~4限まで家庭科部についてどのように情報を集めようかと迷っていた。
上級生に知り合いがいるわけではないし、この場合。生徒会室にでもいって活動内容を聞いてみるべきなのか。そもそも活動しているかが怪しい。直人の話では部活中に家庭科部の話題が出ていたようだから一応は活動しているのだろう。放課後、担任にでも聞いてみるかというところに落ち着いた。
4時限目の終了のチャイムが鳴るとともに
「あ!」
と声を出した理央は弁当を持ってくるのを忘れていたことに気が付いた。
毎朝、雅子が作ってくれているもので父と理央の分を持たせるため作ってくれるのだがこの日は前日からの部活動のなどの一連の悩みで失念していた。
理央は弁当を忘れたことよりも雅子がこのことに関して殊、食に対しては尾を引くことが多く、特段気を付けていたのだがやってしまったと嘆いた。
以前、無断で外食した際に、夕食をいらないことを伝え忘れ、帰宅し、そのことを伝えた際えらく落ち込み、無理やりその日に食べた思い出がある。しかもそういう日に限ってフルコースだったりする。後日ねちねちと言われ、えらい目にあった苦い記憶は鮮明に頭の片隅に残っている。
雅子に詫びのアプリで連絡をいれたが既読はついたものの返信がなく、今夜の対処に頭を悩ませた。昼食は1階にある購買部でサンドイッチとミネラルウオーターを購入し、ビニール袋に入れ、片手で持ち運びながら、自分の机で食べようと考えた。近くにコンビニはあるのだが外出するには担任の許可が必要となるため、煩わしく思い、校内で昼食の購入を済ませた。
授業を受けつつ機嫌が悪そうな雅子、家庭科部のことについて思案していたため、やや疲れ気味の理央。
クラスに向かう階段でも考え事をしているとタタタタッっと小走りで走ってくる音が聞こえた。2階から3階にかけての踊り場を移動の際、その音が聞こえていた。
呆けながら階段をあがっていくと、ドンッと誰かとぶつかった。
「っつ!」
一瞬の間があり
「ごめんなさい!急いでいたので。大丈夫ですか」
ぶつかった女子生徒が声をかけてくれたがぼーっとしていた自分も悪いと感じていたので
「だ、大丈夫ですよ。こっちこそすみません」
と痛みからくる苦悶の表情で顔を伏せ理央は謝罪した。
「ごめんなさい」
理央はしっかりとは見てはいなかったが深々と腰を曲げ謝ったとたんすぐにまた下の階に降りて行ってしまった。
「いててて」
理央は驚きが優先されぶつかった左肩の痛みが後からよりやってきた。
「昼食休みにそんなに慌てる物かな…」
三階の踊り場でぶつかった部分の肩をもんでいるとあることに気が付いた。
A4版サイズの紙が床に落ちているのが目に入る。
その紙を拾い上げ、恐る恐る内容を確認すると、どうやらレシピらしい。かわいらしいフォントとデザインが印象的でイラストも入ってわかりやすいレシピとなっていた。
どうやらマカロンのレシピらしい。
四角く蛍光ペンで縁取られたレシピの欄外には家庭科部で使用する旨が記されていた。
理央はどうやら家庭科部は存在するらしいことがここで確認できた。
しかしその紙には名前が記されておらず、呆けていたので落としただろう当の本人はすぐさまそこを去り、顔とか胸の蝶ネクタイの色(女子の場合、蝶ネクタイの色で学年がわかるため)を確認しておらずどこの誰に届ければいいのかわからず、いったん教室までそれを手に持ってクラスに帰った。
自席に着き、サンドイッチを頬張り落としたレシピを眺めながらいろいろと考えた。
どうやら現状でも部活動は行われているらしく、この紙から察するに部活動はある程度活動している。なぜなら日付が記されておりそれが先週の日付だしこのレシピの完成度を見るとかなりしっかりとつくりこまれているからである。たまたま今回、力作のレシピを拾った可能性もあるが。
これらのことから放課後に家庭科部に部活動の活動内容を聞きに行こうと理央は考えた。
今でもよかったのだかすでに5限の10分前だったので、理央は再考した。
実際、今、家庭科室に赴いても誰かいるか保証はない。
放課後に改めて訪れてみよう。
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