第22話 情報

 それから更に数日経って、俺はようやく普通に動ける程度に回復した。


 棗さんの"能力"を沢山使って貰ったお陰だ。


 回復している最中、目を覚ました俺の所に小野寺くんや永瀬さん、会長達がお見舞いに来てくれた。


 みんな家族と無事に再開出来たようで、特に宮住さんは探してい弟と再開出来た事に沢山お礼を言ってくれた。


『市街地』内の探索も順調に進み、今探索している範囲の食糧や使えそそうな物資は、粗方集め終わったらしい。

 今度は別のエリアを探索し始めるそうだ。


 俺も動けるようになったからには会長達を手伝いたいが、それよりも前に東京からの避難者が居る市民センターへと向かっていた。


 そこで確かめないといけない。

 じいちゃんがと何を話したのか。


「こっちです、風音くん」


「ありがとうございます、長田さん」


 長田さんに案内されながら市民センターへと急ぐ。

 場所は病院からそんなに離れている訳でもなく、徒歩数分だった。


 市民センターはそれなりに大きな建物で、中に入ると大きなホールがあり、主に子供や老人が居た。


「重症者は病院に運びましたが、それ以外の方や子供さん達はこちらで生活して貰っています。修造さんが話されていたのは・・・」


 長田さんが言いながら辺りを見回す。


 すると彼女が見つける前に小さなクマのぬいぐるみを抱えた女の子が小走りで近づいてきた。


 その子は長田さんの腰の辺りに抱きつくと言った。


「桜子ちゃん。こんにちは」


「こんにちは、彩記さきちゃん。ちょうど良かった。探してたのよ」


 長田さんは、抱きついてきた女の子の頭を撫で名前を呼ぶ。

 女の子は意味が分かってないのか、撫でられながらコテンと首を傾げた。


 そうしていると奥から一人の女性が駆け寄ってくる。だいぶ疲れた様子の女性だ。


 彼女は長田さんに抱きついている女の子へと言った。


「彩記・・・!もう駄目じゃない、迷惑掛けたら・・・!ごめんなさい、桜子さん。娘が・・・」


「いえ、実は私達も瑞記みずきさん達を探してまして」


「私達を・・・?」


「ええ」


 そう言って長田さんが俺の方向いて紹介してくれる。


「風音くん、この方達が修造さんが最後に話していた、中原彩記なかはらさきちゃんとお母さんの中原瑞記なかはらみずきさんです。瑞記さん、彼は風音鈴斗くん。修造さんのお孫さんです」


「風音鈴斗です」


 紹介された俺は、瑞記さんに挨拶する。


 彼女もそれに会釈を返し、小さな声で呟いた。


「そう・・・修造さんの・・・」


「はい。あの・・・俺の祖父、風音修造が何処に行ったか心当たりはありませんか?あなたと話してから祖父は出ていったみたいなんですが」


「・・・」


 俺が質問すると、瑞記さんは俯いたまま黙ってしまう。


 代わりに答えたのは、彩記ちゃんだった。


 彼女は、長田さんに抱きついたまま、ジーっと俺の顔を見て言う。


「お兄ちゃん、すずとって言うの?ちゃんが話してた名前と一緒だね」


「・・・・・・・・・はっ?」


 今、この子は何と言った?

 どうしてアイツの名前が出てくる?


 混乱している俺を余所に彩記ちゃんが続けて言う。


「そういえばくんも、すずとって言ってたなぁ・・・お兄ちゃんは・・・ひゃあっ!」


「風音くん!?」


「さ、彩記!」


 俺は彼女を長田さんから引き剥がすと、肩を掴んで俺の正面を向かせる。


 そして、尋ねた。


と会ったのか?じいちゃんに何を話した?」


「うぇ・・・えぇ・・・」


 自分でも驚く程低い声で彩記ちゃんに詰め寄る。


 俺の剣幕さに、止めようとした長田さんと瑞記さんの身体が固まった。


 それにほんの少しだけ心が痛んだが、それよりも今は聞かなきゃいけない事がある。

 

「頼む。教えてくれ」


 俺が言うと彩記ちゃんは、泣きそうになりながら言った。


「・・・ん・・・おでこ、出して・・・」


「おでこ?これで良いか?」


 俺がそれに従って額を出すと、彩記ちゃんは自分の額を俺の額に合わせてきた。


 その瞬間、映像が俺の頭の中に流れ込んできた。

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