晦(つごもり)のドミニオン
Rlay
第1話
『まずこのメモを読む者に断っておこう。君は島の脱出や他の目的に囚われているかもしれない。だがそれでも君は自由だ』
薄暗い小屋で、薄汚れた紙に書かれた文字を追っているとため息が出た。
昨夜俺を乗せた客船が沈んだらしい。まさか沈むなんて思いもしなかったが、意識を取り戻した時には浜辺に打ち上げられていた。
口の中には砂と塩辛さ。身体は起き上がれない程重く、肩には異常な鈍さがあった。
しばらくしてようやく半身を起こすと、周囲の景色が見えてきた。ヤシや本土にもある木々が生い茂り森を形成している。
振り返れば、きれいな空と白い雲、さらさらな砂浜があった。写真でも目にするプライベートビーチだが、それでも絶望的に船の姿はなかった。
自然とため息がこぼれ、のどが渇き始めていることにも気付いた。
まずは水を探さないと。
幸い気候は温暖なようだ。日の傾きから見て、時刻は早朝のようだが、濡れた体でも肌寒い程度。ここから暑くなるかもしれない。
そうなる前に水と食料を見つけなければ。
少し体に力が戻り、ようやく立ち上がれた。
目の前を木々が邪魔をし、小高い山が立ち塞がっている。まるで蟻になったような気分だった。
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