最強魔道士のツンデレが可愛くてパーティーメンバーを増やせません!

坂本 三

第1話 女剣士 アティナ

「メンバーを募集しようと思う。」


「……」


少し躊躇った後

こくりと彼女は頷いた。



フードを深く被った彼女は冒険家ロイにとって唯一のパーティメンバー、魔道士のナイラ。


これまで彼女と二人だけでやって来たが、だんだんとモンスターの量も増えて来て、メンバーが欲しいと思って来た。


むしろどこかのパーティに入った方がいいのかもしれない。



それはきっと彼女も感じていたことだろう。

彼女は


「わかった。」


と小さく呟いた。



ナイラの腕はかなり良く、どちらかと言えばロイの戦力に問題があった。

どれだけ回復されたり、強化されても、それでもモンスターを倒し切るのに時間がかかり過ぎてしまう。

後もう少しで諦めたお宝がどれだけあったことだろう。

ナイラ一人で戦わせてしまっていることにも、申し訳無さを感じていた。



最初の募集に来てくれたのは、

女剣士のアティナ。

3人は早速近場のモンスターに腕試しに行った。アティナは腕の立つ剣士だった。


「アティナは右から!」


「心得た!」

 

普段なら苦戦するモンスターにいい感じに戦えている。


けど違和感を覚え始めた。

あれ?俺の回復だけ無いんだけど…

アティナは…してもらってるんだよなー。


「ナイラ、回復を…」


ツンッと忙しいとばかりに、モンスターへの詠唱を始める。

何か怒ってる?気のせいか?

タイミングが悪かったかな?


「ナイラ、かいふ…」


「ポーション小があるでしょ」


「かい…ふく…」


「渡した薬草使えば」


めっちゃ冷たいんですけど!!!



何もしてもらえなくなって、普段どれだけ戦いやすくフォローしてくれてるかが分かった。



モンスターがナイラを狙って振りかぶった!

ナイラは背を向けて気付いていない。


「ナイラ!」


ロイは身を挺してナイラの背を守り、攻撃を喰らうことを覚悟した。


はっ!!!

ナイラはを防御魔法を使った。

みんな無傷だった。

ロイは立っているのもやっとて、そのまま倒れて意識を失った。


わなわなわなわな

ナイラは怒りに震えた。

そして、そのモンスターには明らかに不釣り合いな超攻撃魔法をぶち込んだ。




(ごめん…なさい。)


何かが聞こえた気がした。

ロイはゆっくり目を開けた。

ナイラがロイを膝枕してくれていた。


「ごめん、ナイラ。気を失ってたみたいで…」


ぼんやりと目を開ける。

まだ体を動かせそうに無かった。

ナイラはロイの顔の前に手をやると、緑の光を纏わせた。

すると、あっという間に体が軽くなった。

体を起こそうとしたが、ナイラが肩を押しそれを止めた。まだ回復が終わって無いのかな?ロイはそのままいることにした。


「なんで謝んのよ…」


「アティナは?」


ナイラは首を横に振った。


「やっぱり僕が弱すぎたかなぁ?」




ロイが倒れた後、こんなやり取りがあった。

アティナはナイラをチラリと見ると


「君はとても優秀だな。君ならもっと先へ行けるだろうに。…まぁ、君をそうさせるのは、こいつが原因かな?」


ナイラはピクリとするが、返事はしなかった。


「彼には悪いことをしたな。私がいると、君もやりづらいようだ。私は他のパーティーを探すとするよ。」


そう言って去ってしまった。

ナイラは反省した。

ロイとアティナが意思疎通もバッチリ戦う姿に、なんだかモヤモヤした。

ロイなんか知らない。と回復をしなかったけど、やりすぎてしまった。


いつもはフォローを過保護なほどにするけど、ぎりぎりまでフォローしないようにすると、目を離した隙に倒れて無いか気が気じゃなかった。



ロイがしょげていた。


「そんな焦らなくても、ゆっくりレベルを上げてから先に進めばいいじゃない。」


ナイラがぽそりと言った。


「ほら、ナイラがさ、世界を見たくて旅してるって言ってたじゃない?

俺もそうだけど。

だから、早くナイラにいろんな世界を見せてあげたくて。焦りすぎたかな。」


フードの奥でナイラの顔がボッと赤くなった。


もう体も元気になった気がしたので、体を起こそうとすると 


「もう少しこのままでいなさいよ。」


「え?でも、もう…」


「いなさいって…」


「…はい。」


ロイはあきらめて言う通りにした。

ナイラの柔らかい膝枕。

下から見る彼女はいつもよりも近い。

ん?と首を傾げる姿にドキンとした。


「もう、あんな無茶するんじゃないわよ。」


ナイラが戦闘を思い出して言う。


「ご、ごめん。でも無茶してでもそうするよ。だって…ナイラが傷つくのは…嫌だから…」


ロイはすーすーとそのまま眠ってしまった。


「馬鹿。」

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