一時間の死神

wadrock

第1話 悠久の丘

雲一つない草原が見える。

延々と続く丘が下に見える。


私は空を飛ぶバスに乗っていた。

乗客は何人か見えるが、不思議と背後が暗くなっていて、ぼんやりとしか見えない。


日差しは強そうだけど暑さも眩しさも感じない。

そうこうしてまどろんでいると、

バスは音もなくゆっくりと丘に降り立った。


前の乗客がバスを降りるのを見て、私も昇降口へと向かった。

私が草地の感触を確かめていると、車掌がゆっくとバスから降りてこう言った。


「お前たちは死んだ」


車掌の前に私たちは並んでいる。


「死んだ者は生き返らない。だか、このまま死なすには惜しいから一時間をやる」


私は意味も分からずに聞いている。


「特別に一時間の間で最も楽しんだ者だけを生き返らせてやろう」


「丘の下を見るが良い」


丘の下を覗くと、窪地の間に町並みが見えた。


「この町はお前たちが望むものを全て与えてくれる」


「またお前たちの後ろにいる者たち」


乗客達の背後の影が立ち上がり、次第に悪魔のような顔の面々が姿を表した。


「その者たちに必要な物や時間を訪ねよ」


「また時間は厳守だ。一時間を待ってバスは出発する。」


「遅れた者は生き返りは無いと思え」


「分かったな」


そう告げると車掌はバスへ戻っていった。

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