ロザリス防衛戦1

「た、大変だぁあああああ!町の近くまでリザードマン達が大軍で押し寄せてくるぅ!!」


 いきなりギルド内に響き渡る怒号。リザードマンって確かトカゲの人間型モンスターだっけか。ウロコがカタくて攻撃が通りにくいヤツラだったな。


「な、何だと!Aランクのパーティー達はどうしたぁ?!」

「そ、それが全員返り討ちに合っちまって・・・退却するところをツケられたらしいんだ!!」

「何つぅヘマやりやがったんだアイツラぁ!今ここにはAやBランクどころかCランクぐらいのヤツらだけだぞ!!」

「と、とにかく町の入り口まで戦える冒険者を集めないと・・・この町が襲われちまうんだ!!」

「分かった!おぅお前ら・・・動けるヤツ全部集めて入り口に集合かけろやぁ!!」



 これは危険な状態だ。頼みのAランク達が戦えず人員はCランクしかいないなんて。


「・・・ねぇルーブル」

「俺も同じ事考えてた、手続きが終わったら俺達も向かおう」

「ふふっ、そうこなくっちゃ!!」


 受付からギルド参入の手続きを済ますとボク達は、慌てて町の入り口に向かう冒険者達の後についていくことにした。




 ロザリスの町の入り口は堅塁な城壁で守られている。ケガをした何組かのパーティーが担架で運ばれていく。この場に集まった30名ほどの冒険者が慌てふためいている。


「くそぅ、Aランク達が帰って来たはいいけど全員使い物にならねぇ!」

「対応しようにもこっちにはCランクの人間しかいねぇ・・・」

「Aランクにとっちゃあ格下のリザードマンでもあの大軍じゃあヤラれちまぅぜ!」


 戦う前からこうも慌てていたら勝てるものも勝てなくなるよ。そんな時こそ戦術家ポーターたるルーブルの出番だ、考えていたら声が出ていた。


「みんな、諦めちゃダメだよ!とにかくボク・・・いや彼の指示に従ってちょうだい!」


「な、なんだお前は!余所者は黙ってろ!」

「彼の指示・・・って荷物持ちじゃねぇか!」

「俺らCランクに下っ端Eランクが命令すんじゃねぇよ!!」


 Cランクなのにボク達に文句言ってくる、確かに以前登録し直したばっかだから格下のEランクだけど・・・ボク達は元Aランクだって教えてやろうか?

 隣にいたルーブルが前に出て叫ぶ。


「分かってる!だから尚更俺に協力してくれ!!この町を守るにはアンタ達の力が必要なんだ!今日来たばかりの俺達もここで死にたくはない!!」


「けっ、余所者に言われてもなぁ?」

「荷物持ちなんざ戦闘ゴメン職じゃねぇか!」

「お前に協力してどんなメリットがあんだよ!!」


 言いたい放題言ってくれる。全員ボクの鉄拳で黙らせてやろうか?しかし抑えるようにそんなボクの肩を軽く叩くルーブル。


「そうだな・・・確かに俺は戦闘が得意じゃない、しかしこの窮地を乗り切れたら・・・俺の指示に従ってくれたヤツラにはギルドの酒場で晩メシと酒をおごってやる!!」


「うひょーマジかよ!」

「そいつぁ太っ腹な!!」

「乗ったぜその話!!!」


 今まで文句垂れてた連中が現金な事に晩ゴハンサービスで一気にルーブルに従う。自分で言った通り戦闘職じゃないけどルーブルのこうした人心掌握術はとてもマネできないなぁ。



 こっそりと町の中で一番高い建物の上に登る、スキルを使えば今のボクには簡単だ。


 ルーブルから借りている遠眼鏡で町の外を見ると、遥か向こうからモンスターの集団がこの町に向ってきている。あの様子だと一時間程度で到着するかも。


 昔は偵察なんて全然考えもしなかったけど、戦術家ポーターなルーブルから偵察の方法を教わったのでこんな事も出来るようになった。急いでルーブルの元へ戻る。



「ウィルマ、どこに行っ・・・っといたか、悪いが偵察を頼」


「ふふふっ、もうしてきたよ?町の向こうにモンスターの集団を発見、その数は大体500体ぐらいかな?後一時間もすればこっちに着くよ!」


 ボク達は最高のパートナーだ。このくらいいちいち言われなくても出来るよ!

 ボクの行動に気を良くしたルーブルが満足気に頷き肩に手を置く。ここは頭をナデナデして欲しいのに他の人達がいるから抑えているようだ。ちょっと残念。


「行動が早くて助かる・・・総勢500体か、人間相手なら厄介だがモンスターなら・・・よし、今から作戦を説明するぞ!冒険者達はまずは前衛職と後衛職に分かれてくれ!それから・・・」


 ルーブルの指示の元に冒険者達はテキパキと動く。ここからが戦術家の彼の見せ場だ。すっごい作戦でみんなにびっくりしてもらおう!


 ボクも言われた通りに作業するか。



◇◇◇



 一時間後、500体のモンスターの大群が町の門に向ってくる。作戦指示を出すルーブルも前衛で盾役になるようだ。前衛隊12人のみんながルーブルを取り囲んで相談している。


「ルーブルの旦那よぉ・・・ホントに俺達で切り込まなくていいのかよ?」

「ああ、門の内側に入って来たリザードマン達を倒すよりも攻撃を防いで足止めしてくれればいい」


「けどよ、普通は門前で食い止めるモンだろ?町に入られちゃオシマイだぜ!」

「その辺は後衛職サンにお任せってコトだ、余所者の俺は信じられなくても後ろの仲間達は信じられるだろう?」


 準備の出来た後衛隊の冒険者もルーブルに声を掛けてくる。


「ルーブルさんよぉ!攻撃のタイミングはしっかり教えてくれよなぁ!?」

「ああ、心配ない・・・バッチリやってくれ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る