第12話

●その夜


 〖約二年です〗


 【今夜は僕にとって、人生で最高の夜になりそうだ。こんばんは。今、星を見上げながら、君に恋い焦がれていました。君は遠く離れた相手との絆を信じますか?】


 そうちゃん。今また突っ込もうとしてる? 


 待って、言わないで。当ててみる。


 分かった。日本は夜だけど、ウクライナはまだ昼間だろ! でしょ?


 ローランドは日本時間に合わせてくれているんだよ。ちょっとロマンチックなことでも言いたくなったんでしょ。



 ずっと戦地にいると

     誰しもロマンチシストになるんだなぁ 

                  人間だもの

                      あやな


 

 相田〇つをテイストでやってみたくなっただけ。気にしないで。

 

 〖こんばんは、ローランド。わたしはあなたに興味がありますし、もっとあなたを知りたいと思っています。遠く離れた相手との絆も、きっと近い将来、信じることができると思います。あなたはどうですか?〗


 あ、もちろん、そこまで深く考えていないけど、遠くても近くても、絆はあると思うよ。

 

 ちなみに、あのクソ男との絆はもう存在しないからね。

 

 でも、あのクソ男のお母さんはいい人だったなぁ。猫達も可愛かった。今頃どうしてるだろう?


 【僕も遠く離れた相手との絆を強く信じている。互いに愛し大切に想い合える女性に出会えると確信していたから。もし、運命の人と出会ったら、他の場所で暮らす気はありますか?】


 いきなり過ぎる? いよいよ本格的に怪しくなってきたって?

 

 もぉ、水差さないでよ。ローランドが真剣にアプローチしてくれているのに!

 

 少なくとも、やるべきこともやらない、言うべきことも言わない、どこかのクソ男より、ずっとはっきりしていて迅速じんそくでいいと思うけど。

 

 一応、ひかえめな返信をしておくよ。


 〖まあ、必要とあらば……ですね。考えたこともなかったので、今は何とも答えられませんが〗


 【僕は、その彼女の考え次第です。もし彼女が望むなら、僕は彼女の家で一緒に暮らす。彼女が僕の家で暮らしたいなら大歓迎だ。あるいは、全く別の場所がいいと言うなら、それでも僕は彼女の意思を尊重する。

 

 君の今現在の生活から、現実的に可能かな?】


 うわぁ~、なんか急に将来を真面目に考える内容になってきたね。やっぱ、ローランド本気なんだよ。

 

 何? アホくさっ、テキトーに返信しておけって?


 そんな失礼なことできるわけないでしょ! こっちだって熟慮じゅくりょして答えてあげるのが礼儀だよ!


 〖そうですね。どのプランもとても良いと思います。ですが一番良いのは、やはりあなたの家に彼女が一緒に住むことではないでしょうか。とは言え、今の段階では、彼女もすぐに結論を出すことはできませんね。慎重に考えるための十分な時間が必要です〗


 え? 五百年ぐらい必要だとでも言っとけって?

 

 そんなこと言ったら、こっちの人格疑われるよ。日本人は礼節を重んじることで、世界中から尊敬されているのに。


●翌朝


 アートだね! 何の花だか分からないけど、オレンジ色のお花がいっぱい! 花瓶から溢れそうなほどあるよ。

 

 ローランドのくれる画像って、毎回とっっってもセンス抜群!

 

 はいはい、分かってるよ、そうちゃん。何が言いたいか。

 

 パクリ画像じゃないか、でしょ?


 絶対そんなはずないって! これもローランドが勤めている病院に飾られているお花だよ。こういうものがあれば、患者さん達だって心が和むでしょ。セラピーの一環でもあるの!


 【おはよう、僕の愛しい女性。昨夜もよく眠れましたか? 今日も歓喜に満ちた日でありますように。そちらの今朝の天気はどうですか?】


 やーだもぉ、愛しい女性だなんて♪ ローランドもやっぱり典型的な欧米人なんだね!


 〖こちらは雨が降っています。天気予報によると、台風が近付いているようです。それに、少し肌寒いです。そちらのお天気はどうですか、ローランド?〗


 【こちらは曇りです。今はコントロールルームでリラックスできています。そちらはもうお昼かな?】


 そうちゃん、また疑ってる? 本当にサキの天気が曇りかどうか、調べてみるって?

 

 いちいち調べなくてもいいよ。どんだけ暇なの?

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