第17話 言葉について

世間には

「『男から見た女の配偶者』のことを『嫁』というのは許せない」

という人がいるのだそうです。私にはこれが言葉狩りにしか聞こえませんが一応、理由を聞いておきましょう。

「嫁というのは本来、夫側の親が息子の配偶者に対して呼ぶものであり、見下しているような印象を受ける」

というものです。なるほど、もっともらしいですね。

話が変わりますけれど「僕」という一人称名詞がありますね。

この言葉の根底には「下僕」という熟語から分かるように、とてつもない謙譲の強い言葉だったのです。

つまり

「僕は‥」

は正確には

「下僕である私は‥」

になる訳ですね。

しかし「僕」という言葉を使う99.99%の人はこんな事は知らない訳ですし、知っていたとしてもそういう意味では使わないでしょう。

つまり!

「僕という言葉は『本来』非常に謙遜が強い一人称であったが、『意味が変わり』単なる一人称として使われるようになった」

とこういう訳です。「嫁禁止論者」はこの視点がかなり抜け落ちていると思います。

「嫁という言葉は『本来』息子の嫁の指す言葉であったが、『意味が変わり』既婚の女性を指す言葉になったのです」

嫁を差別用語にしたいのならば、

「嫁という言葉は『なんとなく』見下している感じをうけるから変えてほしい」

と言った方がまだ説得力があります。

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