異世界でハーレムを作るだけのお話。
行記(yuki)
#001 戦士の少女①
「ご主人様、新しい子が来ました」
「あぁ、ご苦労」
「…………」
義体のメイドに連れられ、目つきの悪い主人に引き合わせられる奴隷の少女。
「まずは健康状態を確認する。服は、自分で脱げるか?」
「…………(こくり)」
ゴミ袋を思わせる麻服が脱ぎ捨てられ、少女の裸体が露わになる。
年齢は成人手前と言ったところだろうか? 小麦色の肌に青みがかった黒髪。ここだけ聞けば健康的な印象を受けるが、その体には無数の傷が刻まれており、何より年齢に不釣り合いな鋭い視線が男を狙っていた。
「欠損は…………無いようだな」
「傷が酷いですね。あとでシアンさんに来てもらいましょうか?」
年齢の割には大きな胸、体毛は産毛も含めて生えておらず、獣人の血は入っていない事がうかがえる。この様な容姿の種族はダークエルフが挙げられるが、少女はそれとも違う。
「急ぐ必要はなさそうだがな。そこの(卑猥な形状の)診療台に座って股を開いてくれ」
「ぐ……」
少女が苦い表情を浮かべながらも、見ず知らずの男性に性器を見せる。少女は奴隷。奴隷にも種類はあるものの、彼女の場合は完全な主人の所有物であり、不服でも逆らう権利はない。
「膜はあるな。初めて取引する相手(奴隷商)だったから心配したが、やはり仲介を……」
「ハァ!!」
主人が性器に注目する隙をつき、突然襲い掛かる少女。
「おっと。なかなか積極的だな」
「えっ? なんで!??」
主人の顔面を股で挟み込み、そのまま首を捻り落そうとするが…………主人はその攻撃を受けても微動だにしない。結果として性器を顔面に押し付けただけの構図になってしまった。
「ご主人様! 大丈夫ですか!??」
「大丈夫だ、問題無い。しかし、少女でもやはり戦闘民族だな」
少女の種族は"アマゾネス"。女性のみで構成される戦闘系部族で、本来はもっと大柄な体格で、成人すると里を出て傭兵となり戦場を渡り歩く。結婚の習慣はなく、戦場で出会った強い男と体を重ね、子供が出来れば里に帰って部族が共同で子育てにあたる。
「それで、この子は……」
「っ……」
2人は渋い表情で主人の判断を待つ。本来、奴隷が主人を襲うのは重罪であり、厳罰、それこそ見せしめも兼ねて処刑される可能性も高い。
「まぁ良いさ。もともと分かっていた事だしな」
「!!?」
再度椅子に座わり、性器を露わにしながらも少女は驚く。
それもそのはず、この主人の異名は"死神"。これまでも多くの奴隷を処刑してきた過去があり、少女は奴隷としての教育の他に、主人の危険性も聞いていた。少女にとってこの行動は"賭け"であり、殺すか殺されるかの勝負であった。
「しかし年齢的な部分もあるだろうが、ずいぶん小柄だな。お前の部族は、皆そうなのか?」
「え? そ、それは……。……」
主人がアマゾネスを見たのは、これが初めてではない。彼は元冒険者(対魔物)であり、傭兵(対人)の事情は微妙に畑違い。それでも多少の縁はあり、大柄で筋肉質のアマゾネスを幾度となく目にしてきた。
しかしながら、最前線で果敢に戦う者が長く生きるのは難しい。特に昨今は、魔法や兵器の発達により前衛の攻防は軽視され、使い捨ての肉壁のように扱われるようになった。そのためアマゾネスらしいアマゾネスは生還できず、弓や遊撃型の戦士の割合が高くなったのだ。
「本当に、過酷な世界なんですね」
「まぁ、俺としては教えられる"戦闘スタイル"で、助かるけどな」
「え?」
少女の分類は"性奴隷"。その仕事は主人の性欲処理であり…………そもそも連れてこられたこの場所は、主人が権力にものを言わせて作ったハーレム。そのため少女は、戦闘民族としての誇りを捨てる覚悟をしてこの場に来た。
「ウチはハーレム要員にも確り働いて貰っている。むしろ、性欲処理だけしていればなんて考えるヤツは、即クビだから」
「むしろ、
「え? いや、あくまでメインは……」
「何ですか?」
「いや、何でも無いです」
「…………」
状況に困惑する少女。
死神の噂は有名なものらしく、少女も覚悟していた。しかしそんな彼は、少女の浅い人生経験で量れるものではなかった。
「あぁ、そうだった。まだ、名前を聞いていなかったな」
「え? あぁ、"ヒスイ"…………です」
「そうか、俺はクロノ。こっちはアイリスだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いいたします」
「え? あ、あぁ。こっちも頼む」
こうしてアマゾネスのヒスイが、ハーレム候補生としてクロノに引き取られた。
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