第21話 ソファに寝るのは誰だ

私は「時の加護者」アカネ。

私とシエラは「レギューラの丘」に届けられた生活用品や食材を運ぼうとした。すると荷物にまぎれて料理屋のアコウが眠っていた。私たちはアコウを仲間に迎えいれる。だが、私は気が付いた。なんとアコウはオペラタワーの喫茶店「真天珈」のウエイターにそっくりなのだ。


— 時の空間 「喫茶店 真天珈」—


さすがは料理の腕は親譲り、アコウの料理はどれもバリエーションがあり素直においしい。『強くなる』なんて志はやめて早いところ料理人になった方がよいのではと思うほどだ。


「ねぇ、アコウ。ここの料理って魚と野菜が多いよね。ていうか肉料理ってないでしょ? なんで? 」


「ん~? わからないなぁ。俺が小さい時にはもう既になかったから同世代で肉料理食べた奴いないよ。いや、肉料理があるってこと知らない奴が多いと思う」


「シエラちゃんは知ってる? 」


「おそらくは.. 」


「『おそらく』って? 」


「昔は肉料理がありました。人々は獣をとらえ肉は食し、皮は加工して生活に利用していたのです。僕が石像になる少し前から獣の中に異変が起きたのです。獣の中に人の形をしたものが現れ始めたのです。その獣はとても凶暴で知性がありません。人々は呪いにかかった人間が生まれ変わったものと思って恐れていました。おそらくそれが原因で人々は獣を食べなくなったのではないでしょうか? 」


「突然変異? でもそんなに急に変異なんてするのかな? 」


「はい。それについては僕も疑問があるのです。あの人型の獣には魂の響きを感じないのです」


「まぁ、そんなことより料理はうまいだろ。まだたくさんあるから遠慮なく食べていいよ」


アコウの料理を食べて少し休憩後、シエラとの修業はまだ続いた。今回の授業は精神論が多かった。『敵を視覚のみでとらえず感じるのです! 』とかかなり難しい。そんな修業をさらに体感2時間で行った。


その間、暇なアコウはシュー族のラインとソックスと遊んでいたようだ。ラインとは角VS腕で力相撲をしたり、ソックスとは俊敏さを競い合っていたようだ。


現実時間ではそろそろ夜になる頃、いくら何でもこの圧縮時空間で寝過ごすのは気味が悪い。ほんの5,6時間眠ったつもりなのに実際は何年も寝ているなんて考えたくもなく、「時の空間」を出ることにした。


空間の外は完全に野宿状態。とりあえず、空間外に運び出したベッドに誰が寝るかは、平等にじゃんけんで決めた。フカフカのソファにニコニコ顔でくつろぐシエラを横目に私とアコウは荷車内で寝ることとなった。


***


『アカネお姉ちゃん大変だよ! 起きて!』


子供の声に目を覚ます。荷車を降りて周りを見渡しても子供の姿は見えない。その代わりに月明かりに照らされて、遠くから何かが近づいてくるのが見える。


「シエラ! 」


「はい、アカネ様。どうやら敵のようです」


さっきまでソファで寝息を立てていたシエラは既にその者たちを見据えていた。

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