平凡だった俺

ももり

第1話 絶望

「ただいまー」


……


ん?どうしたのだろう?いつもは返事が返ってくるのに…リビングの電気もついてないし出掛けてるのか?


「おーい…」


と言いながらドアノブに手をかけた瞬間とても嫌な予感がし、勢いよく扉を開けた。


だが、そこに広がっていた光景はいつもと変わらないものだった。


何だ気のせいか。






と、思ったのも束の間背後に殺気を感じ振り向いた。


次の瞬間には人影のようなものが目の前にあり、襲われていた。


何が起こっているのか全く理解できないが必死に抵抗した。


「…誰だっ…お前…はっ…」


俺がそういうと相手は力を緩め耳元で囁いた。


「お前の人生滅茶苦茶にしてやる」


背筋が凍った。






怪しい人物はその言葉を言い、逃げようとしたので追いかけようと起き上がった途端蹴り飛ばされた。


「ま…待て…!」


頭を強く打ち遠のく意識の中やっとの思いで言葉を発したがそれも虚しく逃げられてしまった。



「…くっ…」


どれくらい意識を失っていたのだろう…


目が覚めてもリビングは真っ暗なままだった。






唐突にさっきの怪しげな人物に言われた言葉が脳裏をよぎった。


とても嫌な予感がした。


痛む体を勢いよく起こし俺は2階へと向かった。


階段を駆け上り手前の部屋のドアから順番に開けていったが何一つ変わったところはなかった。


最後に残ったのは寝室。


異様な雰囲気が漂っていた。


開けたくない気持ちでいっぱいになったが勇気を出し扉を開けた。






「…!」


目の前の光景にとても頭が追いつかなく真っ白になり、その場に崩れ落ちた。


「な…なんでっ…ゆみ…」


そこには見るも無残な状態の妻ゆみがいた。


「どうして…こんなことに…」


訳がわからない。


さまざまな感情が込み上がってきて、涙が溢れてきた。






まだ収まりそうにない涙を拭いながら警察に電話をした。


十数分後には警察が到着し現場検証や取り調べなどが始まった。


第1発見者は1番の情報源であり犯人かもしれないとゆう疑いもある立場だそうで、今日1日朝起きてから家に帰り通報するまでの間のことを事細かく聞かれた。


疑いが完全に晴れたわけではないが今回はひとまず解放してくれるとのこと。


警察署を出た頃には朝日が昇り始めていた。


まだ混乱した頭で会社に休みの連絡を入れ休ませてもらった。






何も考えられず重い足を1歩ずつ前に出し何とか家の近くまで辿り着いた。


すると家の前がざわついているのが見えた。


「なんだ…?」


近づいていくとマスコミだということがわかり、1人の記者がこちらに気づき駆け寄ってきた。


記者「あのー、すみません。こちらの家の方ですか?」


何も返事をせずにいたがそんなことはお構いなしに記者はまた質問をしてきた。


記者「こちらのお宅で殺人事件が起きたという情報が入ったんですが何かご存知じゃないですか?」






その言葉を聞き俺はいろいろな感情が一気に押し寄せてきた。


「…ほっといてください」


一言だけ言い群がる記者をかき分け家へと入った。


ソファに座りこの家で起きたことが頭をぐるぐると巡り、また涙が溢れてきた。


…ポーン…ピンポーン


どうやら泣き疲れて寝てしまっていたらしくインターホンの音で目が覚めた。


「もしかして記者か…?」

そう思いインターホンのモニターを見た。






「まさき大丈夫か…!?」


そこには両親の姿が映っていた。


玄関の扉を開けると2人の後ろにはまだ記者たちがいたが玄関の前までは来れないのかある程度の距離があった。


2人を中へと入れ、しばらく沈黙が流れた。


両親には会社に休みの連絡を入れる前におおまかなことを連絡していた。


それを見て2人は来てくれたのだろう。


うちからは離れたところに住んでいるのに足を運んでくれるなんていい両親を持ったな…






父「…それで大丈夫か…?」


「…うん、とりあえず今は落ち着いてる」


母「無理はしないでね。突然こんなことになって混乱したり泣きたくなると思うけど我慢しないで泣いていいんだからね?」


その言葉を聞き俺はまた涙が溢れてきた。


ひとしきり泣き終わり父が話し始めた。


父「迷惑かもしれないがしばらく母さんと2人でまさきのそばにいさせてくれないか?」


母「やっぱり1人でいると余計に気持ちが落ち込んじゃったりすると思うから」






「…2人ともありがとう…」


俺は泣きながら2人にそう伝えた。


そしてこの日を境に俺の人生は大きく変わることになる。

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平凡だった俺 ももり @momori_desu

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