マン オブ ザ ミレニアム
COTOKITI
第0章 1003年の命
第1話 よくある戦場の一日
宇宙は、果てしなく広い。
何万、何億の人の死を呑み込める程に。
そんな果てしない宇宙にとっては、現在行われているある戦争の一大決戦など、ほんの些事に過ぎないのだろう。
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〈西暦2891年 A-7952宙域〉
果てしない宇宙。
その暗黒の中で、数多もの閃光が迸る。
人が生み出す光にして、人を葬る光。
《敵艦隊、再びレールキャノンの発射を確認!!》
《予測弾道の算出急げ!!》
《AF隊は全機発艦準備!》
《攻撃隊は全機対艦兵装!制宙隊は対AF兵装で出撃しろ!》
光がパチ、パチ、と瞬く間に何千人何万人もの人々が死んでいく。
《ハインケル、ヴェスター、カールが被弾!!》
《こちらヴェスター、動力炉と弾薬庫に被弾し重大な火災が発生!!我操舵不能!!繰り返す、我操舵不能!!》
《ハインケル、弾薬庫が誘爆。轟沈します!!》
前線に突出した艦艇がレールキャノンと対艦ミサイルによって次々と沈む。
この戦争の原因は元はと言えば、このA-7952宙域付近にある資源惑星の利権絡みのライバル企業同士の対立だった。
レオナルド社とカリスティア社。
共に優れた経済・軍事力を持つ大企業であり、数々の戦争で多くの弱小企業を食らって来た捕食者でもある。
国家亡き今、この世界を統治する数多もの企業はイデオロギーや宗教などと言った物を捨て、己の利益のみを最優先とする考えを持ったが故に常に争いが絶えなかった。
全ては利益の為。
そこには正義も信念も執念も怒りも憎しみも無い、ある意味でクリーンな戦争の形態。
思想無き戦争、と人は呼んだ。
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「AFが出るぞ!!」
「カタパルトの用意だ!!」
無重力空間のカタパルトデッキ内を何十体もの巨人が歩く。
人型汎用機動兵器、「アーセナル・フレーム」。
人類が技術力の発展の中、導き出した機動兵器の答え。
この数百年に渡る兵器開発の結果、航空機は航空機の形状を捨てた。
正確には、搭載するジェットエンジンやロケットエンジン、その他の機体制御システムなどの著しい発達によって機体形状を考えるのに空力特性を考慮する必要性が無くなったのだ。
圧倒的に自由度の増した機体開発の中で生まれたのがこの人型兵器である。
大量生産される量産機でありながら陸・空共に対応しており、「アームス・パッケージ」と呼ばれる任務に応じた武装と装備をパッケージングしたユニットを換装する事により、対戦車から対空、対艦戦闘まで幅広くこなす事が出来る。
「ディフレクタ展開完了!」
「全機発艦準備完了!」
カタパルトに固定されたAFはその背中のスラスタを最大まで噴かす。
噴射炎がディフレクタを噴き付け、衝撃波を拡散する。
「AF隊、発艦!発艦!発艦!」
カタパルトの固定が解除され、AFが急加速し船外へと飛び出した。
他のカタパルトからも同じようにAFが飛び出し、巡航速度で飛行しながらフォーメーションを組み始める。
《全機方位174、目標はカリスティア社第141艦隊。デブリに紛れて行くぞ》
《了解》
スラスタ―が激しく火を噴き、合計230機の発艦したレオナルド社のAFは極超音速で敵艦隊のいる方へと向かっていく。
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