人を信じられなくなった支援魔法使い(奴隷)はもう一度人を信じることができるのだろうか

ACSO

奴隷が貴族に心を開くまで

第1話大嫌いな貴族の奴隷に

ほとんど光が差し込まない暗闇の中、しくしくと泣く音や、体調不良により荒い息を吐く者、人生に絶望し、何の反応も示さない者など、ワケアリが置かれる奴隷市場の奥の奥。

そこに、俺は両手首を鎖で繋がれ、首輪を付けられている。


「おい、ご主人様がいらっしゃったぞ! さっさと立って挨拶しろっ!」


「……」


 まともにご飯を食べれずに痩せ細った俺とは対照的に、贅肉がでっぷりと乗った腹を揺らしながら俺を叩き起こす奴隷商人。

 ……汚ねえ手で触るなよゴミ。

 以前なら蹴り飛ばすなり叫ぶなり、何か抵抗してみせたが、そんな体力すら残っていない。

俺がここにいるのもどれだけ暴力を振るわれてもこいつらに抗ったからだ。


「おい! ちっ……すいません、教育不足で」


「いいのよ。それより、痩せ過ぎじゃないかしら? ちゃんと管理してるの?」


 聞きなれない声に視線を向けると、わずかに漏れる光の先、空のような青髪を優雅に揺らす女がいた。

 貴族だ。

 俺は女を睨みつけ、貴族に買われてたまるかと鎖を揺らして音を立てる。


「……奴隷にも規律があり、ルールを守れば飯を食わせてやるんですが、こいつはいつも暴れるわ叫ぶわで……。罰として飯を抜くって決まりで抜いててもやめないんです」


「そう。元気でいいじゃない、ね?」


 女は俺の視線を気にした様子はなく、むしろ煽るかのようにウインクを飛ばしてくる。


「っざ……んな……!」


 ふざけるな! と叫ぼうとするも、喉が枯れて出たのは掠れた高い声だけ。

 微かに漏れた俺の声を聞いた女は何を思ったのか、優しげな微笑みを携えて俺の元へやってくる。


「あなた、私の奴隷にならない?」


 ガシャン!

 俺の頬に女の手が触れた瞬間、俺のどこにそんな力が余っていたのか大きく体を揺らし、手を払い除け、女は勢いに負け尻もちをつく。

 やってやった……!

 貴族に抵抗し、尻もちをつけてやった!

 そんな感情をわき目に俺の体は震えて、涙が止まらなくなる。

今の俺の心は壊れている、と俺も分かっていた。


「……オーナー。この子、買うわ」


「ぅぐ、ひぐっ……」


 嗚咽を漏らす俺を無視して、この貴族の女と奴隷商人の間で契約が成立した。

 俺は、これからの人生に不安を覚えるのだった。






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ヒロインたちが本格的にヤンなデレを見せてくるのは20話以降となる予定です。

一つの山場がその辺なので、長いと感じる方はその辺りを一度見てから、その理由を探しに最初からみてみてもいいかもです。

筆者的には最初から読んで欲しいですが。

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