第16話 尋渡の想いと自分の想い
「尋渡、今度出掛けない?」
「良いけど」
「二人でだよ」
「うん」
私達は出掛ける約束をする。
そして休日――――
「何処行く?」
「ごめん…決めてなくて…」
「そっか…じゃあ、適当にドライブする?」
「うん…」
自分から誘っておいて
二人きりのデート
嬉しい半面
正直……
複雑な心境だった……
「藍李、大丈夫か?」
「えっ?」
「緊張してんの?」
「いや…緊張するとかしないとか…別に…」
「そう?いつもなら会話弾むけど……」
「久しぶりだからじゃない…?つーか、そんなに会話…弾んでたっけ?」
「藍李…」
「ごめん…」
「いや…」
少しの沈黙が流れる。
「…ねえ…尋渡の中で、まだ…お姉ちゃん存在しているんだよね…」
「えっ…藍李…」
「…私の想い知ってるけど…尋渡の想いがないから私達は何も変わらないんだよね?ずっと今の関係のままなんだよね…」
「…………………」
「…ごめん…だけど…ハッキリと言って欲しい!私…待ってても大丈夫なの?」
「…藍李…」
「…ごめん…尋渡…車を停めて…」
「えっ?」
尋渡は、車を脇に止めた。
「ごめん…誘っといておいて…今日は…やっぱりいいや…」
私は車から降り、足早に去った。
「藍李ちゃん!」
私は、そのまま去って行った。
その日の夜。
「おかえり。兄貴とデートじゃなかったのか?」
玄関に入ってすぐ、友矢と鉢合う。
「…数時間だけ…」
「えっ?」
私は部屋に行く。
後を追うように、友矢がくる。
「藍李、入るぞ」
カチャ
ドアが開く。
「……………………」
「兄貴と別々、帰ってきたみたいだし、何かあったのか?」
「…別にない…」
「………………」
ドアを背にベッドに横になっている私の元に来ると腰をおろす。
「友矢は…幸せ?」
「えっ…?」
「なんて…聞かなくても…幸せか…」
「………………」
「そうとも限らないけど?」
私は起き上がる。
「えっ?嘘だ!絶対、そんなわけない!」
「どうして、そう思うんだ?」
「それは…何となく」
「何となくって…」
「………………」
「つーか…友矢…」
「何?」
「Hしてるんだよね?」
「誰と?」
「お姉ちゃんと」
「どストレート過ぎだろ?」
「何処で?いつしてんの?」
「はあっ!?」
「ねえ、ねえ!あー、友矢の部屋に呼び出してヤッちゃう感じ?」
私の両頬をつまむ。
「お前には関係ねーだろ?」
「いやいや…義理妹(いもうと)として」
「意味分かんねーし」
私達は騒ぐ。
ある日の夜――――
「あれ?お前、まだ起きてたの?」
「いいでしょう?目が覚めたの!」
「あー、お前夕飯食べずに、おねんねしてたもんな」
「そうです!つーか、あんたは?シャワー…?あー、お姉ちゃんとベッドインか」
「愛する女と一つになるのは、当たり前。兄貴、しばらく出張らしいし」
「チャンスと言わんばかりにHしまくりだね」
ベシッ
オデコを叩かれた。
「痛っ!」
「お前、顔に似合わすどストレート過ぎんだよ!」
「悪い?」
「つーか、お前は?兄貴とHしたの?」
「してない…つーか…尋渡の心ん中には、私はいないよ…」
「じゃあ、そんなの関係なく押し倒してHすれば?」
「あのねー…!その前に拒まれるから!…つーか一生無理なんじゃないかな?」
「えっ…?」
「今思えば…前の方が良かったかも…って思う。確かに辛かったけど…今は逆に距離出来てる気がする…」
「気のせいじゃねーの?」
「気のせい…?どうかな…?」
「………………」
頭をポンとされたかと思うと、グイッと抱き寄せる。
ドキン
「ちょ、ちょっと…!」
「スッゲー辛いくせに無茶すんなよ」
「…お姉ちゃんに…怒られるよ…」
「お前が辛くて悲しくて泣きたい時は泣けば良い」
「……………」
「俺が受け止めてやるから」
「優しくすんなっつーの!」
揺れ動きそうな心
コイツの一言は
とても嬉しかった
男は優しい時もあるけど
時々 いい加減で
好きでもないのに
思わせぶりな態度
女だって
そういう時
あるかもしれないけど
――― でも ――――
こんなとき胸借りて
泣いても良いよね…?
駄目ですか…?
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