第8話 義理の兄弟の存在

「ねえ」



ある日の放課後、一人の男子生徒が声をかけてきた。



「はい」

「ねえ、尋渡って知ってる?」




ドキッ



「…尋…渡…?」

「そう」




《尋渡と言ったら……お姉ちゃんの…》




「耶吹尋渡。23歳」

「えっ!?」


「あんたのお姉さんと結婚してんだろう?そして…今は同居」



「………………」



「そしてあんたは、俺の兄に一目惚れ」



ギクッ



「えっ…?…兄…?」

「なーんて」



歩み寄る男子生徒。




私の席の前に来ると、

私の片方の肩に手をおくと、耳元で




「俺の義理の兄の事よろしく」



そう言うと去り始める。




「…それから」



振り返る男子生徒。



「あんたに恋の味方つくといいけどな?」

「えっ?」


「あ、ちなみに俺、井田蔵 友矢(いたくらともや)。義理の兄にでも聞きな」




そう言うと教室を出て行った。



「本当…運命のイタズラだよな…」


彼はポツリと呟いた。






何を意味してる?


彼と尋渡さんの間



そして……



私の人生を左右する




その日の夜―――――




「尋渡さん、ちょっと良い?」

「どうしたの?」

「尋渡さん…弟…いる?」


「弟…?あー、いるけど。血の繋がりのない義理の弟がね。それがどうかした?」


「あ、ううん。私と同じ学校にいて」


「あー、そうか。アイツ言ってたっけ?アイツ、女、取っ替え引っ替えしてるっしょ?藍李ちゃんも、騙されないように気を付けてね」



「私は大丈夫だよ。だって好きな人いるし」




《言ってしまった…》



「へえー、どんな子?ちょっと興味あったりして」

「尋渡さんには関係ないでしょう?」

「えー、お義理兄(にい)ちゃんなのに?」

「義理兄ちゃんだからって話せないのもあります!」




私達は騒いでいた。





数日後――――――



「えーーっ!?留守番!?ちょ…」




私の声も届かず両親は出掛けた。



2泊3日。


うちの両親は親戚の結婚式に出掛け、尋渡さんの両親もイトコの結婚式に出掛けた。


そして、お姉ちゃんは仕事の都合で残業であり、同僚の先輩の所に外泊。


尋渡さんは出張らしく私は一人留守番だ。




「………………」




「…最悪…せっかくの休日が…潰れた…はあぁ〜〜…」




大きい溜め息を吐き、一日目の夜は静かに更けていった





次の日――――




「藍李ちゃーーん」



ドカッ

誰かが私の上に乗る。




「…重…」


「もう昼前になってるけどー、いつまで、おねんね中?天気の良い休日くらい外出したら?」


「…う〜ん…一人だから…ゆっくり…一人に……」



バッと起き上がる。


ドキーーッ



至近距離にある尋渡さんの顔に驚き胸が大きく跳ねる。



私は布団で隠すように目元まであげる。



「な、なんでいるのぉ〜〜っ!出張は!?」


「いや、予定より早く仕事が終わってと、言うより終わらせてきた」


「えっ?」


「一人で留守番、寂しがっているだろうな〜と思って」


「尋渡さん…」


「年頃の女の子、一人じゃ今の世の中は危険ですから。はいはい、起きて!」




私の手を掴み立たせる。




「家にいても暇だし、デートしよう!デート」




ドキッ


「えっ!?」

「都合悪い?」

「えっ?あ、ううん」


「だよねー、だって彼氏の話、一切、出ないし男がいるって感じじゃないし。ただ、好きな人はいる。そんな所。好きな子に告白したら?」



「結構です!第一、フラれるのと言うより、既にフラレてるから!」


「えっ!?何、何?それは、想いを告白したという事?実は、妻子あり…とか…?不倫とか…?いやいや、それはヤバイでしょう?家庭崩壊だよ?藍李ちゃん」


「ち、違います!」


「じゃあ、何?」


「そんなの関係ないでしょう?と、ともかく用意するから出てって!」


「えーーっ!良いじゃん。聞かせて」


「嫌です!」



私は部屋から追い出すように、尋渡さんの背中を押すようにする。





次の瞬間――――



「きゃあっ!」

「うわっ!」



ドサッ

バランスを崩し倒れる私達。




「…………………」




ドキーーッ




「何かあったら面白かったのに」

「えっ…?」


「例えば倒れた瞬間に、チューとか?ありがちなパターン」


「そ、そんな事、駄目っ!」

「二人で黙っていれば済む事じゃん!」

「尋渡さん、冗談にも程が……」




微笑む尋渡さん。


ドキン…




「…………………」


「別に初めてじゃないんでしょう?」

「えっ?」

「だって、今の子達って進んでるでしょう?」

「私は違うし」

「じゃあ、初めて尽くし?」



「い、いけませんか?」

「おーーっ!新鮮!」

「とにかく準備するから出ていって」

「はいはい。じゃあ待ってる。藍李」




ドキッ


そして、尋渡さんは部屋を後に出て行った。




「…い、今…よ、呼び捨てにされた…」





そして、私達は、出掛ける事にした。


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