青い少年は最初で最後の恋を知る

にわ冬莉

プロローグ

 中学生の頃読み漁った漫画は、もっぱらファンタジーだった。

 扉の向こうには異世界が広がっていて、自分は世界を救うキーパーソンとして召喚される、とか、学校にイケメン転校性がやってきて、実はその男の子が魔界の王子で、自分とは運命の赤い糸で結ばれている、とか、いわゆるそんなやつだ。


 でも、さすがに高校生にもなれば魔法やイケメンは自分と無関係であると気付く。

 小テストの結果や進路、はたまた、同じグループの誰に彼氏ができたなどというこじんまりしたリアリティに支配されていくのだ。



「あ~、まさか香苗に先越されるとはな~」


 放課後、彼氏と帰るね! と先に教室を出た香苗の後ろ姿を見ながらそう呟いたのは、みずき。顔は可愛めだしスタイルだって悪くないのにイマイチもてないのは、彼女が全国高等学校空手道選手権大会で上位の成績を収めるほどの達人だからなのだろうか。もっぱら言い寄ってくるのは年下の『女子』ばかりだった。


 そして私、志穂。


 至って平凡、なんの特技もなけりゃ特別でもなんでもないJK…

 このまま平凡に、大した出来事もなく登場人物Aのようなモブ的立ち位置で生きていくんだと信じて疑いもしなかったこの日、私は……知った……。

 

 私の知らない世界は、まだ、沢山あるのだと……。

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