第3話 Consciousness
「――ア――リリア?」
「――っ?」
ある時。
すっかり考え込んでいた私は、フェリスに声をかけられ、ハッとして顔を上げた。
「どうしたの?最近なんだか元気なさそうだけど……」
栗色の髪が日に照らされて、輝くように白く透けている。
私の癖のある黒い髪とは違う、風になびくその美しい髪に見惚れながら、慌てるように誤魔化した。
私のフェリスへの気持ちも、未来への不安も。
「う、ううん。なんでも、ない。ほんとに……」
「そうかな……なんだかぼぅっとしてたよ?体調悪いのかなって」
「……心配しないでいいよ。ほんとに何でもないから」
「ならいいけど……何でも言ってね、リリア」
「あ、ありがと、フェリス」
心配そうに覗き込んでくるフェリスに、慌てて私は気持ちを押し殺す。
この感情は、フェリスには知られてはならないんだ。
だって彼女を巻き込みたくない。
教会から、教義から、世界から隔絶された世界で、生きていくなんて……
そんなことは、私だけでいいんだ。
そう、それでいい。
さんざん考え込んで、私はフェリスへの気持ちをずっと胸に閉まっておく決意を固めた。
だって、そもそもフェリスだって、同性の私から好きだなんて言われても困るに決まってる。
何より、フェリスから「気持ち悪い」とか、そんな反応をされてしまったら、きっと私は立ち直れない。
片想いでいい。
振り向いてくれなくていい。
奇跡的に両思いになれたとしても、待っているのは地獄だ。
――あぁ、好きな人とずっと生きることが許させるならどんなに――
涙が止まらない。
ズキズキと痛む心を無視しながら、どうしても溢れてしまう涙を隠れるよう拭い、平気な振りをしていた。
すると。
フェリスが、優しく頭を抱きかかえてくれた。
「リリア。何があったかは聞かない。でも、リリアのその苦しむ姿を見ていると、私は胸が張り裂けそうになるの……」
「フェ、リス……」
「どうしても堪えきれなくなったら、言ってね」
「……うん。ありがとう、フェリス」
フェリスの体温を感じながら、私はなんとか、口走りそうになる自分の想いを堪えた。
――創造主様。
もう少しだけ、このままいてもいいですか。
好きな人と、このままもう少しだけ。
いつか、離れ離れになってしまう、その時まで、どうか――
――この想いが、どうかフェリスには届きませんように。
張り裂けそうな想いを、胸の奥深くに閉じ込めた。
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