第13話 皇帝陛下と謁見しました
翌朝、皇帝陛下との謁見があるとの事でレティシアがボサボサの俺の髪を整えてくれた。着る物も青狼騎士団から借りた。白いシャツに青いコートだ。俺の服では駄目なようだ。
レティシアと二人で階下に下りるとエステルさんが待っていてくれた。
「おはよう……って誰? って言うかライオット君だよね!? 凄い男前じゃないッ! レティシア、隠してたわね」
「ち、違うよお姉ちゃん! ライは普段はボサボサ髪なのよ!」
「へぇ、勿体ないわねぇ」
「い、いいのよ! ライはボサボサで!」
「へぇぇぇぇぇぇぇ」
エステルさんはとてもニコニコしているが、何か良い事でもあったのだろうか?
「彼氏が目立つと困るからかな?」
「彼氏では無いぞ」
「本当にぃ?」
「ああ、レティシアがそう言っていたからな」
レティシアの方を見ると頬を大きく膨らましていた。
「もうっ! ライのバカバカバカバカッ!」
何故かレティシアが俺をポカポカ殴る。全て躱わすけどな。
「避けるなバカァァァァ!」
◆
俺とレティシアは青狼騎士団の団長とエステルさんに連れられお城に来ていた。
お城は凄いな! 建物も、壁も、置いてある物も全てが煌びやかだ!
謁見の間という場所はもっと凄い部屋だった。全てがキラキラ輝いて見える。
俺とレティシア、一緒に来た団長とエステルさんは赤い絨毯の上で膝を付き頭を垂れて王様が来るのを待った。
足音が聞こえる。十五人か?
「面を上げなさい」
面って何だ? 俺が悩んでいると小さな声でレティシアが「顔を上げるのよ」と教えてくれた。
顔を上げると煌びやかな服を着た男が玉座に座っていた。アレが皇帝か。威風堂々とした様は正に皇帝だ!
「シルヴィスよ。こたびは余の我が儘で迷惑をかけたな」
「勿体なきお言葉、痛み入ります」
シルヴィス? 団長の名前か?
「してドラゴンを倒したのはそこの者か」
「御意。こちらのライオットが二匹のレッドドラゴンを討伐致しました」
何やらヒソヒソ声が聞こえる。
皇帝の両脇には綺麗な女性がいて。更に右脇には厚ぼったい服を着たお爺さんが二人、銀の鎧を着た五人の騎士、左脇には白い鎧を着た五人の騎士が立っている。
ヒソヒソ声は銀色の鎧を着た騎士達から聞こえくる。
「ライオットとやら、随分と若いようだが歳は幾つじゃ」
歳? 俺の歳は幾つだ? コロボックルは歳を気にしない。だから数えた事もなかった。「十六」と小さな声でレティシアが教えてくれた。
俺の歳は十六みたいだ。何で知っているんだ?
「十六だ」
隣のレティシアがだいぶ慌てて小さな声で「十六です、よ! で・す!」と囁いている。
「十六です」
「若いな。その歳でドラゴンスレイヤーとは将来が楽しみじゃ。さて褒美を取らそう。竜殺しの勲章と、やはり騎士の叙勲が良いかの」
回りがザワついている。どうしたのだろうか?
「ライ! 凄いよ! 騎士よ! 騎士!」
「勲章は必要だが、騎士は要らないな」
「「「えっ!?」」」
「俺には美化職員の仕事が有るからな」
俺が断ると隣の団長は肩を震わせて赤い顔をしているが、笑っている様なので大丈夫だろう。
正面の銀色の鎧を着た騎士達も赤い顔をしているが、いささか怒っている様だ。
「ふむ、騎士は要らぬか。美化職員とはどの様な職かの?」
すると隣に立っていた老人が王様に耳打ちをした。
「ふむ、学院の仕事か。まあよかろう。ならば報酬を与える事としようではないか」
「陛下、その騎士叙任の件は、保留にして頂けませんか」
そう言ったのは団長だった。
「ライオット君ほどの才能を野に置いておけば、要らぬ波風も立ちましょう。彼は我が青狼騎士団の見習い騎士として、青狼騎士団預かりと致しました。保留の件、是非とも宜しくお願い申し上げます」
そうだったのか。知らなかった。
「うむ。シルヴィスにも迷惑をかけたからの。保留の件はよしとしょう」
「ありがとうございます、陛下」
謁見はこれで終わり、俺は報酬金を貰ってお城の建物から出た。報酬金は金貨千枚だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます