第7話 涙の理由を聞きました
レティシアを寮に送り届ける道すがら、急にレティシアが怒りだした? どうしたのだろうか?
彼女の友達はステームという男とトラブルを起こしている事が俺にも分かった。しかしコロボックルの村でも剣を振るう事しかしていなかった俺が力になれる事は残念ながら無い。
しかしレティシアに言われ、俺は友達の女の子の部屋に行く事になってしまった。
女の子の住む寮の中はとても良い匂いがする。春の花の匂いだ。
「クンクン鼻を動かさないの」
「そうか」
俺はレティシアの友達の部屋へと通された。この部屋もすこぶる良い香りだ。
「だからクンクンしないの!」
「そうか」
「本当に大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
部屋には髪の長いお淑やかな雰囲気の女の子がいた。校舎裏で見かける女の子だ。
「どうかしましたか、レティシア様……」
「……ステームの事よ」
「…………」
女の子は俯き泣いているようだ。
「だ、大丈夫です……」
「大丈夫じゃないよ。ステームに言い寄られているんでしょ」
「…………」
「ライが話しを聞いていたのよ」
「ライ?」
「彼がライよ……ってまたクンクンしてるぅ!」
匂うな? 僅かだが……。
俺は部屋に入り匂いの元を探す。……ここか。
「ちょ、ちょっとライ! 何やってるのよ!」
カーテンの匂いを嗅いでいた俺の肩をレティシアが掴む。
「このカーテンから匂うな」
「な、何がよ」
「あの男の匂いだ」
「「えっ!?」」
◆
女の子は泣いていた。部屋に来た時から泣いていたが、今はレティシアに抱かれ大泣きしていた。
俺はカーテンの匂いを嗅いだ後に、更に匂いを嗅いだところ箪笥へと至った。どうやら盗まれたお金は箪笥に入れていたらしい。つまりあの男が盗んだ可能性が高いとレティシアが言っていた。
「ステーム……。伯爵家の息子だからってこんな事は許さない!」
「れ、レティシア様……」
「決闘よ! 決闘をしましょう!」
「えっ!?」
レティシアが決闘すると言い、女の子が驚いている。
決闘か!
村でも女の子をかけて決闘をしていた奴らがいたな! 俺はやった事は無いが。
「セレナ、決闘を申し込みなさい。私達も協力するから! ネっ、ライ!」
「俺か?」
「そうよ! 決闘は三対三でも出来るの!」
「俺は学生では無いから無理なのでは?」
「大丈夫! 決闘は学校に所属している人なら誰でも権利が有るのよ」
レティシアの話しでは、決闘で生徒対生徒や生徒対先生などの対決があるらしい。
「でも決めるのはセレナよ……」
「……は、はい……。け、決闘……や、やります」
女の子の部屋にはあの男の匂いが残っていたが証拠はない。決闘でケリをつける。レティシアの話しはよく分かるが……。
「あの男は決闘を受けるのか?」
「受けさせるわ! あたしが餌になる!」
「餌?」
「れ、レティシア様ダメです!」
「大丈夫よセレナ」
「餌ってどういう事だ?」
「あた……私はこう見えても侯爵家の次女よ。私と付き合う事を餌にすればステームは必ず快諾するわ」
「そうか。それで侯爵家って何だ?」
「「…………」」
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