第5話

 次週書類を持って店を訪れた。もしかして、書類作成ができないかもしれないと思い願うような気持ちで博士にサンプル資料を差し出した。「これをどうすればいいの?」と博士は聞いてきた。「この書類から見積書を作成します、そしてこの書類からは決算書を作成します、この資料からは日報を作成します、無理ですか」と願うような気持ちだった。「できるんじゃないかな」と博士が目を通した。「作成する書類の書式、レイアウトはこのようになります」と付け加えた。博士「わかった」と受け取った。「来週また来てくれる」と言った。私は細かい話が必要ならと連絡先を伝えようとしたが、博士は受け取らなかった。「正式契約をしてからにしてくれ」と言った。私はその意味が分からなかった。契約をしていないから必要ないといっているのか、契約をしてくれとお願いされているのか分からなかった。「契約はどうすればいいですか?」と聞くと、「ロボットができてから、一連の作業工程に満足してからでいい」と博士が言った。「また来週来て」と言って博士は中に入っていった。私はお願いしますと言ってその後ろ姿を見送った。

 店を出て街を歩いているとその店の女性を見かけた。私はその姿を確認しながら駅に向かった。私は彼女を追うつもりはなかったが、同じ電車に乗り同じ駅に降りたのを確認した。駅に着くと気づかれないようにさらに慎重に後ろを歩いた。結果的に私のマンションの隣に彼女が入っていった。私は彼女が郵便受けを確認しているのを見ていた。彼女がエレベーターで上ると、彼女が見ていた郵便受けを確認し部屋番号をメモに残した。

 私の部屋から彼女の部屋が見えることが分かった。双眼鏡で彼女の部屋をみた。外出から帰ってきて、彼女は窓を開け空気の入れ替えをしていた。彼女はどこかに電話をかけていた。カーテンを閉めてしまった。

 次の週企画立案に関する資料を店にもっていった。さすがに企画立案はできないと断られた。請求書の作成や決算書の作成等は行えた。私はロボットの能力に満足した。私は買いたいと伝えた。箱型ロボットで書類を入れると出来上がって箱から出てきた。パソコンを接続して書類が画面に映りロボットが間違いをした場合、人間が訂正して入力するとことができた。ロボット箱は会社の机に置ける大きさだった。博士は「メンテナンスはするよ」と言った。相談とか随時できますかと尋ねると「もちろん」と博士は答えた。「遠隔操作で簡単な修正は可能」と博士は付け加えた。私が料金を尋ねると、想像しているよりも安い金額であった。リュックに入るか確かめたが難しかった。宅配してくれるように言うと、彼女が配達伝票を持ってきた。私は彼女に住所が知られることに多少の気恥ずかしさを感じた。彼女は何も言わずに私が書いている住所を見ていた。何も言わないから「海の近くなんですよ」と言うと、微笑みを浮かべながら「そうなんですね」と言って何もその先は言わなかった。「この辺知ってますか」と探りを入れると、「あまり知りません」と答えた。私はお金を銀行口座に振り込みにすると言って、店の銀行口座を聞いた。彼女が差し出した紙に書かれた口座にスマホから振り込んだ。彼女は画面で振り込まれていることを確かめると、「ありがとうございました」と言って微笑んでいた。私は彼女に「ロボット好きなんですか?」と聞いてみた。彼女は「私はあまり詳しくない」と言った。私は高額商品を買った勢いもあったのか、思い切って彼女を食事に誘った。彼女は「都合が合えばお願いします」と言った。私はしつこく引き下がると、「私、本当はロボットだから食事が必要ないんです。ごめんなさい」と言って店の中に入って行った。私は嘘だと思った。彼女は人間だと確信した。

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