最終話 壊したくないんだよ……
「ぐ、ぅ」
ひゅうちゃんは呻いた。
神社の裏側にある畑、軽トラックの荷台に押し込まれる。
鼻血を垂らしたタケルは、呼吸を乱して馬乗りになって細い首にしがみつく。
「逃げんなよ、なぁ、死ぬ前に教えてくれよ……本当のことをさぁ」
「ど、どうして……」
「あ?」
「なんで、私に」
苦しそうな声。
タケルは鼻で笑う。
「別に何も、どうせ死ぬんだ、お前も俺も一緒にな。けど最期に真実だけは知りたい、父さんは悪くなかったって信じたいからさ」
「…………わ、私」
ゆっくりと、口を開いた。
その数秒後鈍い音が聞こえた。
目を大きくさせたタケルは、何も言わずに覆いかぶさる。
「え……」
ぐったりと重い。
次に見えたのは鍬を振り下ろした祖父のニコニコとした表情。
「こんなところにいたんだね、ひゅうちゃん」
「お、おじいちゃん……」
「大丈夫、気絶してるだけだから。こいつは隣町に返してやる」
「…………」
「ひゅうちゃんはエライね、さすが俺の大事な大事な大事な大事な孫だよ。息子もひゅうちゃんがいるから頑張って働いて、俺のボケに世話焼いてくれてんだ。かなたちゃんも良い子、タケルくんも良い子だよ……なぁひゅうちゃん?」
「あ…………あ」
ニコニコとした表情のままタケルを乱暴に引き剥す。
「これは全部悪い夢だからさ、明日からいつも通り、な?」
明日の日向を探す Akikan @OBkan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。