将来出会うかもしれないお姉さんの為に人生を捧げてきた俺は、遂にお姉さんに出会うことが出来た。しかし数があまりにも多すぎた。 正直お姉さんは2人が限度だと思います。

僧侶A

第1話

 春川渚の朝は早い。


 まだ高校生の筈なのに起床時間は驚愕の午前5時。


 部活の朝練がある人や遠くから通っている高校生からすればその位当然だって?


 そんな化け物と俺のような一般的な高校生を一緒にしないでくれ。普通人間ってのは最低8時間は寝ないとやっていけるように作られていないんだ。


 5時起きで健康的な睡眠を取る為には21時に就寝しなければならないんだ。出来るわけ無いだろ?


 だからさっさと朝食を作らなければならないのだ。


 あまりにも面倒だが、アパートのワンルームに一人暮らしをする現役高校生なのだから仕方ない。


 というわけで俺は昨日の夕方に買っておいた食材を冷蔵庫から取り出し、調理を始める。


「とりあえず鮭をフライパンで焼いて……」


 フライパンに油をひいてから火をつけて、あったまったタイミングで鮭を投入。


 皮も好きだったよな。ならちゃんと焼いておかないとな……


「確か卵焼きは出汁派だったはず」


 冷蔵庫に出汁は……あった。


 完全に買い忘れていたのだが、買っておいてくれたらしい。運が良かった。


「溶き卵に出汁を入れてもう一度混ぜて……よし」


 十分混ざり合ったタイミングで卵焼き用のフライパンに投入……


「おっと危ない。油を忘れていた」


 焦げ付いたら掃除が大変なんだ。


 やはり口で工程を言うのは大事だ。寝起きの頭だとミスが増える。


「よし、油をひいたのでキッチンペーパーでふき取り、まず溶き卵の4分の1を投入。中火だよな」


 卵に火を通している間に鮭を確認。


「丁度いい色になっているのでひっくり返して反対側を熱する……」


 それからも俺は一つ一つ工程を口に出しながら調理を進めた。


「これで完璧」


 完成したのは焼き鮭、味噌汁、卵焼き、白ご飯という理想的な朝食一人前。見ただけで既に美味しそうだし、食べたら良い一日を過ごせそうである。


 流石俺である。


「ではこれを」


 机に持って行って実食!というわけではなく、お盆に乗せて外に出る。


 そして隣の部屋の前に立ち、チャイムを鳴らす。反応が無い。


「また寝てるな……」


 俺は事前に貰っていた合鍵を使い、家の中に入る。


「おじゃましま~す」


 廊下を通り、部屋の扉を開ける。


 ベッドから手も足も届く位置にある机の上に朝食が乗っているお盆を置き、吹き飛ばされないように机を移動する。


 そして、


「朝ですよ、起きてください」


 家主の肩をゆすり、叩き起こす。


「ん……まだ寝かせてよ……」


 と言いながら家主は寝ぼけ眼で俺をベッドに引きずりこもうとする。


 俺は気持ちをぐっと抑え、


「駄目です。今日は大事な実験なんですよね?」


「うう……」


 実験と聞いて流石に理性が勝ったようで、目を擦りながら体を起こした。


「おはようございます。ゆかりさん」


「おはよう、渚くん」


 隣の部屋の家主の名前は菅原ゆかり。隣に住む大学生のお姉さんという最高なお方である。


 しかもちゃんと美人。最高である。


 見た目はおっとり系のお姉さんなのだが、その見た目の通り面倒見も良くご飯を定期的におすそ分けしてくれるというわけではない。


 寧ろ俺が作ってあげている側である。料理が苦手らしいのだから仕方ない。


 それでもトータルで言えばちゃんとお姉さんしていて最高である。


 さっきのベッドに引きずり込もうとする動作とか芸術的としか言えないだろ。


 なんてことはどうでも良くて、


「どうぞ、今日の朝ごはんです」


 朝食を食べさせるというこの部屋に来た目的を果たさなければ。


「毎朝ありがとう。大好き!」


 ゆかりさんは朝食を一瞥した後、柔和な笑みを浮かべて俺に抱き着いてきた。


「あの、ちょっと……」


「良いから良いから」


「良いからじゃなくてですね……」


 口では一応嫌がっているが、心の中では大歓喜である。最高です。ありがとうございます。


 おっとり系の見た目通りゆかりさんはしっかりと巨乳である。つまり、しっかりと当たっているのだ。あのデカブツが。


 こんなガードの緩さで大学生としてやっていけるのか?という疑問が浮かびかねない行動だが、


「渚くんは私の弟みたいなものだからね。ただの家族のスキンシップだよ」


 どうやら俺は弟認定らしいのだ。確かに姉妹ならハグしても健全ですね。はい、ありがとうございます!お姉さん!


「はいはい。それぐらいにしましょうか。で、食べてくださいよ。もう6時ですよ」


 一生そうしていたいという気持ちを抑えつけ、再び朝食を食べさせる。

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