第43話 会議は踊るか踊らぬか
「私を訪ねて来たのだから既に知っているとは思うけど、改めて自己紹介をして置くわね。
私はエルフ種族三大派閥の一つ、
この娘、私の
アオちゃんが私の顔色を伺いつつ、頭を優しく撫でながら、イントルに質問をした。
まあ、ナデナデは気持ちが良かったから別に良いんだけど、それよりも出鼻でアオちゃんが自身の自己紹介を行った中に、色々と突っ込みたい言葉が満載なのは、一体どういう訳なのか。
だが!
そんな俺の情動を置き去りにして、会談はドンドンと進んで行く!
「はい。
実際に合うのは初めてですが、通信では一年ほど前から親しくさせて貰っています。 」
うん、まあ、イントルが本体かどうかを抜かせば、その通りではあるな。
でもちょっと待って!
さっきの件がまだ、消化しきれてないんだけど!
「申し遅れました。
私は、こちらの私設営利人材団体【イントルーダーズ】の現在の代表となっております【イントル・ゼロ】と申します。 」
オイオイ、【イントルーダーズ】なんて物騒な集団名を名乗って大丈夫なのかよ?!
まあ、安易にイントルから取ったんだろうけど、意味が【侵略者】ってやろうとしてる事をぶっちゃけ過ぎだろ!
「え? 別にそんな事、全然考えてないですよ。 」みたいな顔をしてても、この場にいる全員にはバレバレだよ!
そんなの関係ねえって感じの澄まし顔で、更に話を続けるイントル・ゼロさん。
「直ぐ後ろに控えているのが、【イントル・ワン】、
【イントル・トゥー】です。
共に、現在は副代表を任せています。 」
イントル・ゼロが後ろの二人を紹介すると、それぞれが名前を呼ばれたのと同時に、サッと頭を上げてこちらに視線を向けてから、再び顔を伏せた。
イントル・ワンがケイミィと同じ縦割れ虹彩の眼をしていて、イントル・トゥーがゼシカの特徴の青い鱗肌を、前髪で半ば隠すかのようにだが額に有していた。
なんかイントルってば形から入る性格なのか、変な所に拘ってるよな。
それか俺に対しての敬意とか、忖度しているとかなのかね。
「以下、【イントル・フォーティ】までがここに参じていますが、他にもこの屋敷外に護衛用の機械式アンドロイドが取り敢えず十体程、幾つか有る拠点にも若干名の人員を配しています。 」
おおぅ、思ったよりしっかりとした規模の支援体制だし、十分な武力じゃないの。
って言うか、現状じゃ過剰過ぎなんじゃない?
今の段階で、こんなにも大勢を食わせて行くのって結構な負担だと思うんだけど、ちゃんとその当ては有るんだろうね、イントル・ゼロさん?
俺が将来の不安に心を
俺は例によって、アオちゃんの脇にダランと抱えられてだがね。
因みに、残った人達には軽食や飲み物が振る舞われる様子。
大勢連れて来たので、対応も大変だ。
オバちゃん達、頑張って!
さて、隣接している会議室に移動してきた俺達は、大きな円卓のあっちとこっちに別れて席に着き、改めて自己紹介し合ってから会議は始まった。
それに伴って自己紹介中に、お茶と軽食がそれぞれの前に配されてきた。
思わぬ事態が連続しての緊張で喉が渇いていた俺は、早速お茶に手を伸ばして、ゴクゴクと飲み干した。
オバちゃん、おかわり頂戴!
まあ、俺の事は放っといてくれ。
会話の詳しくは省くけれど、向こうはゼロ、ワン、トゥーが会議に出席し、こちらはアオ、アイマ、アイゼン、アンヌが参加だ。
アイゼンが警備員の、アンヌが女中さんのそれぞれの代表って感じだね。
会議の始まりは、俺とイントルの出会いから現在までの経過と、イントルがここへとやって来た理由の説明からだった。
基本的には、イントル・ゼロがこちら側との会話の主導権を握り、俺がたまに聞かれた事に対して補足するといった感じで会議は進む。
専門的な難しい工程の説明が俺一人では無理だったから、今までアオちゃんにも俺達がやろうとしていた事業の説明をしていなかったという事情もあり、計画の詳細を語るのには結構な時間が掛かった。
因みにここでいう詳細とは、俺とイントルがアイディアを出し合って起業しようと考えていた【スキル付与事業】に関する事についてだけだ。
イントル達の正体とかは、取り敢えずは隠して置くことにした。
まあ、一度に沢山の機密情報を明かされても、いたずらに混乱させるだけだしね。
取り敢えず、次にあるだろう驚愕の事実の披露時の為に、その機会は取って置こうっていう感じだ。
ところで、俺も疑問に思っていた事をちょっとイントルに聞いてみた。
「ねえねえ、なんで今回わざわざ大人数で来たの?
話し合うだけなら、ここに居る人達だけで良かったんじゃない? 」
それを聞いたイントルが、少し呆れたような顔をして説明をしてくれた。
「スキル付与に絶対必要なのは、なんだと思ってるの?
それは勿論の事、付与するスキルよね。
で、そのスキルってのは、現在何処に有るの?
それは私達の机上の空論の中にしか、存在していないのよ。
だから、スキルは私達が作り上げて、用意しなければならないの。
そしてその為に必要な人材が、今日ここに連れて来ているあの娘達なのよ。
あの娘達が、スキルと呼べる程の完成度の経験を積み重ねて、専門家、達人、名人、匠等になり有りと有らゆる物事をマスターして、そのノウハウを他人に付与できる形に纏め上げたデータベースを構築して、初めてこの事業を円滑に運営出来るんだからね。
そう容易には、物事は進まないってこと。
まあ、今日は長い付き合いになるだろうからって、顔合わせのつもりでも連れて来てるんだけどね。 」
おぅ。
俺的には、スキル付与って簡単に出来るもんだと考えていたが、実際にやろうと思えば色々と手順が必要で、人手も結構な数が要るのね。
なんか思ってたのと違って、かなりの大事になって来たな。
そこにアオちゃんも気になる点があったのか、話に加わって来た。
「今の話を聞くに、当分は人材を育てる必要があるようだけど、それが出来る拠点とかは準備が出来てるのかい? 」
「ええ、まあ。
今のところ、旧コロニーを中心的な活動拠点にしようと思っています。
現在、利用者もなく使いたい放題ですし、ある方のお陰で使用権限とかの許可も取れていますので。 」
イントルの説明に、そのある方っていう者の見当が付いたアオちゃんが、俺の顔を覗き込んで来た。
俺は肩を竦めて、それに対する解答を無言で返しておいた。
取り敢えず、詳しくは後で個人的にね。
会議も終わりかなという段になってふと気が付いたんだけど、イントル・ワンとトゥーはお茶と軽食をパクついてるだけで、話し合いに加わる素振りも見せていなかったんだけど、それで良いのか。
もっともワンもトゥーも、ゼロが元になっている存在だとしたら、殆んど同一人物だと言っても過言ではないことから、全く問題は無いのかもしれないけど。
そんな感じで、初めての会談は思いの外、良い感触で終了した。
まあ今回決まった事は、来る日に備えてそれぞれ準備しときましょうって位で、お互いの役割について確認し合った程度だったからね。
今後行われるだろう実務者会議に出席する人達に、詳細については丸投げした形だ。
何にせよ、幼児に会議は似合わないって事が良く分かったな!
まあ、後は任せた!
善きに計らえ!
ってことで!
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