第41話 未来に向かっての雌伏
エネルギーチップの確保の方法については、何とか格好が付きそうな感じに話が纏まったので、あと話を聞いて置くべき事って何か有ったっけ?
ちょっとボーッとしていたら、イントルの方でまだ言い足りない事が有るようで、なんか続きを話し出した。
「強化の話に加えようかどうしようか迷ったけど、効果は小さいけど一応意味が有る事なので追加して置くわね。 」
「まだなんか有るの? 」
「私達が人類に同化するだけで起こる事象なんだけど、前に言ったと思うけど身体を構成している原子自体の存在強度を上げているのよ。
つまり各原子一つに対して、電子が一つ追加されている状態で、全原子がイオン化していると思って良いわ。 」
「イオン化してると、一体どうなるの? 」
「イオン化すると、それまでの原子が行ってきた現象が起き易くなる。
つまり、原子や分子の機能が活性化するのよ。
それで活性化すると、その存在が全体として強化されるんだけど、その上がり幅はそんなに大きなものでは無いわ。
それでも、無いよりはよっぽどか増しでしょ?
まあ身近な例では、幼児にしては健康的な貴女や、結構な老人なのにいきなり快復しだした貴女の曾祖母とか分かり易いでしょ。 」
「えっ、アオちゃんが急に元気になったのは、イントル達の同化が原因だったの?
なあんだ、そうだったのかぁ。
アオちゃんの精神力が、特別化け物って訳じゃなかったのね。
なんか安心したわ。 」
「いえ、そうとも言い切れないわよ?
切っ掛けと言うか、要因にはなったと思うけど、あそこまでの快復は上手く説明出来ないから。 」
「まあ、詳しい原因はこの際どうでも良いわ。
アオちゃんが元気になったという結果が良いんだから、大歓迎よ。 」
「貴女にとってはそうよね。
まあ、大まかに言えば同化による強化はこんな所よ。
後は、何かしら起きた時に、その都度検証しましょう。 」
「そうだね。 」
イントルが話し合いをまとめに入ったので、俺も承諾しておいた。
今後の俺に関わる案件が起きるのは、イントル(元本体)が素体を得て帰って来てからだろうな。
それまでは、アオちゃんのリハビリに付き合って、これからの為に体力面の増進を頑張って行こうと思う。
――――――――――
イントル待ちの状態で暇な毎日の中で、以前に疑問に思っていた第二期世代人への引き継ぎが上手くいってなかったという案件の詳細を、アオちゃんから聞いていた。
これまで自分が把握していたのは、統括AIの運用形態が違っていたという所までだったので、そこから先の話だ。
結論から言うと、前世の俺・アイが構築した三基の統括AIを使用した
その辺の事情を、当時の第二期世代人は知らなかったのか若しくは甘く見ていたのか、システムに不具合が起きても放置したようだ。
自分達の新コロニーでは一基の統括AIで十分に運営出来ていたから、二基残っていたなら二倍の性能、効果が有ると誤解していたみたいだ。
そしてその結果、次第に施策においての失敗や意味不明な物が増えていって、最終的に旧コロニーのシステムには頼らなくなり、現在の凡庸な運営が
そりゃ、不具合の有る統括AIの交換用に、何処かのを一基持ってくるのは面倒だとは思うが、直そうという気概は少しも無かったのかよ。
当時の首脳部の奴等には、ホント呆れるしかない。
それから、人事についても同じ様な事が起きていたようだ。
俺が総司令になって、ケイミィとゼシカを副司令にあてての人事、それにも三位一体の概念を導入して運用していたのに、その方針も無視されていた。
なんか、前の権力者の施策とか考え方を一切受け付けないといった様な、変な慣例とかでも有ったのか?
若しくは優秀だった前任者に、余計な対抗意識でも持ってたのかねえ。
全然、訳分からんわ。
まあ、今はそいつ等も役職を引退したみたいで、現在の首脳部の考え方は少しは柔軟なモノに変わっているようだから、アオちゃんの政治的圧力がそれなりに効くと言ってたけれどもね。
まあ何にしろ、旧コロニーは最低限の管理用の人員しか常駐していない様なので、ウチの息の掛かった奴と時期を見て入れ変えていって、そう時間を掛けずに旧コロニーの全てを乗っ取ってやろうと思っている。
今は全く使っていないんだから、俺達が有効活用してあげるんだから感謝して欲しい位だよね。
そして、イントル製スキルシステムを電脳に定着させる公営企業とかをそこに立ち上げて、行く行くは火星を裏から支配する秘密結社の影の首領になるのだ!
まあ、最後の秘密結社の首領は大袈裟だけれども、イントル達の事を秘密にしていれば、実質的には同じ様なもんだろう。
どうよ!
俺が、夜も寝ないで昼寝して、苦労してアーリィママの目を盗んでまでして、深夜アニメを長時間視聴して考えついた素晴らしい構想は?!
は? 寝言は寝て言えだって?
寝てたさ……。
寝過ぎで散漫だった……。
ただし散漫な欲望だがな。
ただひたすら儲けることを懇願した……。
そしてすさまじい試行錯誤をくりかえしたさ。
ある時オレは自分の限界に気づいた……。
自分への怒りでとつぜん閃いたんだ……。
超名案がな!!
そして、それが
まあ、ぶっちゃけて言って、色んな所からアイディアを借り捲ってるのは自覚しているが、現実に実行可能そうなんだから、取り敢えずとしてやらないって手は無いよね。
まあ見ててご覧よ。
俺達の力の結集が行き着く先って奴をさ。
――――――――――
アオちゃんの家に来て、早一年近く経ったある日のお昼過ぎ、兄妹三人でテレビのアニメを見ていたら、間借りしている部屋に誰かが
「アイマちゃん、大婆様がお呼びよ。
私と一緒に行きましょう。 」
アオちゃん家の女中さん、多分親戚なんだと思うオバちゃんが、三人の中でも取り分け暇そうにしていた俺を呼びに来た。
ところで、いつもは昼寝をしている時間に俺が起きていたのは、今日の昼にイントル(元本体)が訪問して来ると、昨日イントル(暫定本体)が
ろくに役に立たない幼い身体を持て余していた俺は、漸くイントルが帰って来ると聞いて、やっと自分を取り巻く実態を先に進められるという事に対して、心底打ち震えていた。
お陰で夜の日課の深夜アニメの視聴も、気もそぞろになってしまって、話の内容を全く覚えていない有り様だった。
そんな感じで、オバちゃんの先導を追い抜く勢いで歩を進めていたが、なんか行き先が俺の予想とは違っているようだった。
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