ざまあした悪役令嬢のその後

確門潜竜

第1話 悪役令嬢はざまあしました。

 ドラ王国とコーン王国の統合による新生ドラコーン帝国の建国と、その皇帝と皇后の戴冠式が、盛大に、かつ厳かに終了した。

「は~。本当に疲れたわ。」

 フェニア皇后は、一人自室で、長椅子に身を投げるように座ると、大きなため息をついた。

 ニクス公爵令嬢であった自分を、居並ぶ貴族、海外からの賓客の前で婚約破棄した、当時ドラ王国王太子ユニコと彼の真の恋人と選んだ法服貴族タウロ男爵家令嬢ミラは、その後二人は、ドラ王国国王と王妃となり、身分正しい人々を追放などめちゃめちゃな悪政を行った。一方、フェニアは若きコーン王国国王に見初められ、その王妃となり、その後聖女の力を覚醒、さらに夫の善政に聖女の力と献身と知恵で協力して、コーン王国を豊かにした。自国の衰退、人材の流出を招き、他方ドラ王国はますます衰退、それと正反対にコーン王国の繁栄、それを妬んだユニコは、コーン王国を攻めたが、あえなく敗北、謀反を起こされて逮捕、処刑されたのは数日前だった。ミラは、同日、コーン王国の善政に感銘した農民達の中に投げ込まれ、たちまちのうちに惨殺された。

 フェニアは、この二人にざまあできて満足していた。が、

「これではいけないわ!」

と考え直した。

「両国を真に一つにし、正しい秩序を立て直し、国民を幸せにしないと。父に復帰してもらって、有能な貴族達をしかるべき地位に就けて、卑しい身分の者達は政府の職から追放しないといけないわね。それから…正当な人々に地位と領地を返還して、優雅なサロンも復活させて…あのこうるさい思想家とか科学者、錬金術師や穢らわしい庶民の芸術家などのいない、優雅なサロンを開いて…。そうだ、正当な権利を復活して、累進税制など廃止して国民の負担を減らして、功績のあった市民、農民に報奨金を与えて…それから~、禁止した再洗礼教会やスーフィズムの信者が、差別なしに三位一体教会や唯聖書教会の信者に受け入れられるようにしないとね、彼らは国民の2/3近いものね。国民を一体にしないといけないものね。それから、国民議会なんていう卑しい屑で野心家の口論ばかりの輩の機関は廃止して、ちゃんとした身分ある者を選んで、元の貴族の議会を復活させないとね。でも、功績のあった平民も、地方の議会の名誉議員にしてあげましょう。」

 彼女達を慕って集まってきた農民達の姿を、目に浮かべた。

「悪党共の残党は、まだ残って、抵抗してもいるようだけど、少数に過ぎないわ。国民の大半は、私達を、新生ドラコーン帝国を支持しているから大丈夫よね。」

 その時、夫であるライマキ皇帝が入って来た。その端正で聡明そうな、そして逞しい、頼もしい姿に、あらためてうっとりと見つめた。“この人を助けて、豊かなドラコーン帝国を築くのね。”ニッコリ笑って手を差し伸べた。ライマキは、彼女の魅力的な容姿にうっとりと鼻の下を伸ばしながら、彼女の手を握りしめた。

“この人と、人々が幸福になる帝国作っていかなければ…、いえ、作っていくのよ、いえ、作るのよ!”

 二人の心には、輝かしい帝国の未来と幸福そうに微笑む帝国臣民の姿が浮かんでいた。

“彼女となら可能だ。本当にいい拾い物をしたな。”

 ライマキは、フェニアを力強く抱きしめ、唇を吸った。力強く吸われ、舌を絡ませた。それに圧倒されつつも、うっとりしながらも、体をひたすらまかせながらも、必死に自分の舌も絡ませ、彼の唾液を呑み込み、自分のだ液を送り込もうとするフェ二アだった。明るい二人と新帝国の未来は、何処までも続いているように、この時、二人には思えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る