九州の覇者は生き残りたい ~ 肥後の国に安寧を ~
pierrot
1章 転生編
1話 夢の始まり
「九郎様、九郎様。起きて下さい。」
ううーん。気持ちよく寝てたのにぃ。
んっ?知らない天井だ。ここどこ?
夢の中かな。
時代劇の夢だな。寝る前に時代劇見てたっけ?
いやいや、営業で客先に行く途中だったはずなんだけど・・・
良く分からん。
「九郎様。起きましたか。今日は御屋形様が来られることになっておりますので支度をなさいませ。」
御屋形様?あんた誰?えっ 小姓の小次郎?
ここはどこ?
豊田の荘ってどこだろう??? 今気にしても仕方ないか・・・
熊本って何ですかだって?ええっと、何を聞こうかな。
「今の元号は?」
「正中2年2月10日にございます。」
正中って元号は聞いたことあるなぁ。鎌倉時代の最晩年、後醍醐天皇の時だっけ?
正中の変って
「今の天皇様って後醍醐天皇?」
「そのとおりでございます。」
「これから来る
「九郎様のお父上、
菊池武時?肥後 菊池家って南北朝時代の九州最大勢力になる家じゃん。
確か9男だったはず。今から仲良くしておこうっと。
「ちなみに僕は何番目の子なの?」
「菊池武時様の9男になります。」
ふーん9男か。んっ?9男って僕が将来の武光?
おぉ、本人役か。夢の中ならではの主役級ぅ。うん、うれしいな。
「九郎様も5つになられたので、シャンなさいませ。」
5つかだから目線が低かったのね。夢ならバリバリの第一線で戦っているシーンから始まっても良かったのにね。
・・・ 夢見が悪そうだから今の方がいいや。
まずは親父との面会だったな。何をすればよいのかな?
ああ、着替えね。
うん、753の格好をさせられたよ。
歩きにくいなぁ。
うん、裾を払って歩くのね。松の廊下かよ。
松の廊下って何かって。スルーしといて。
スルーって何かって。気にしないでってこと。
とりあえず親父の下へレッツゴー。
レッツゴーがなにかって。気にしないで・・・。
※※※※※※※※※ 謁見の間 ※※※※※※※※※
上座に引き締まった体の男とその横に女が座っている。
座っている場所からしてあれが父母だろう。
僕は、少し手前に正座して座ると頭を下げた。
「父上、九郎にございます。本年もよろしくお願いいたします。」
「うむ、いくつになった。」
「5つになりました。」
「5つになったか。大きくなったの。何か不便はないか?」
「皆が良くしてくれているので不便はありません。」
生活してないから良く分からないけど、不満はないなぁ。
こういう時ラノベだと改善提案をだして吃驚されるんだけど、何かないかな。
・・・思いつかないな。まわりの状況が分からないし、定番の油つくりでも提案してみようかな。
「父上、先日読んだ書物の中に面白き記載が記載がございました。」
「ほう、もう九郎は書物が読めるのか。えらいのう。で、どんな内容じゃ。」
「はい、菜花より油をとる方法でございます。」
「油とな。武士が百姓の真似事をすることはなぁ。」
「父上、私はまだ小さいので父上のように戦働きをすることはできません。それでも父上の役に立てるようなことを行いたいのです。
確かに油作りは百姓の真似事になるかもしれませんが、このことを通して民の生活を身近に感じられる様になることが、領主としてのつとめだと考えます。」
「うむ、九郎もよく考えておるの。思うようにやってみよ。して、何か欲しい物はあるか?」
「銭100貫。後はこちらで準備いたします。1年後に油の儲けの半分を献上しましょう。」
「よし、分かった。1年後に結果を報告するのだぞ。」
「承知いたしました。」
こうして最初の元手を手に入れたのだった。
※※※※※※※※※ 会見後 ※※※※※※※※※
「九郎様、御屋形様の前であんなことを言って大丈夫なのですか?」
「小次郎は心配性だなぁ。任せておきなさい。」
まぁ夢のなかだしね。駄目だったら手打ちにされそうになった時に目が覚めるでしょ。
親父との面会を済ませた俺はさっそく周りの土地を見て回ることにした。
「小次郎、この辺りはだれが治めているの?」
「九郎様の御爺様に当たります
「御爺様に会える?」
「確認してまいりましょう。」
※※※※※※※※※ 1刻後 謁見の間 ※※※※※※※※※
「ようきたの。それでどうした?」
「御爺様にお願いがあり参りました。」
「言ってみよ。」
「先ほど父上にお会いした時に菜花より油を取り出すことを提案し、承認いただきました。銭100貫頂きましたので、さっそく領内を見て回りたいと考えております。
この辺りに詳しいものを紹介していただけませんでしょうか。」
「そうさのう。甚八、薬師の草庵先生をお呼びしてくれ。草庵先生なら草花の生態に詳しかろう。」
「畏まりました。」
・・・・
「草庵にございます。お呼びとお聞きしましたがいかがいたしましたか?」
「草庵、九郎が菜花より油を取ってみたいと言っておっての。この辺りの菜花が咲く場所を教えてほしいと言っておるのじゃ。」
「菜花ですか。川の土手に行けばいくらでも咲いておりますぞ。お連れしましょう。」
僕は、草庵と小次郎、警護の侍を引き連れて河原に向かうのであった。
※※※※※※※※※ 河原にて ※※※※※※※※※
「九郎様、辺り一面に咲いておりますぞ。」
「本当だね。後は種が取れる時期まで待つだけかな。あ そうだ、草庵先生!この辺りに木工はいますか?」
「河原人の中に得意な者が居たはずですよ。私は、薬草を集めるのに良く河原人に依頼するのでちょっと顔が利くのです。」
「では、今から紹介して下さい。」
「九郎様が直接行かれるのですか。呼びつければよろしいのでは?」
「いえいえ、頼みごとをするのですからこちらから伺いうのが筋ですよ。」
僕は、草庵を急かせて木工の下に向かった。
草庵は、変なことを言う若様だとは思ったが、従うことにした。
・・・・
川原者の住処についた。川縁にあばら家がいくつも立ち並んでいる。
草庵によれば川原者とは狩りをし、皮を加工する技術を持ったものや木工の技術を持った者のあるまりであるらしい。
また、農家の次男以下であぶれたものや武士の落ちぶれたものなど訳有の者が多いとのことであった。
若様が来たということで無礼があってはいけないので、皆、自分のあばらやで息を潜めているようだ。
草庵はその中の一つを尋ね、中から男を連れてきた。
「こちらが紀介です。木工を生業としている者ですよ。」
草庵が連れてきたのは、20代後半位の小柄な男であった。
「紀介です。どういったご用件で?」
紀介はいきなり呼び出されておどおどしているように見える。
「紀介、呼び出して済まない。紀介にはこういった物を作ってほしいのだが出来るか?」
僕は話しながら地面に絵をかいて説明した。
「へえ、出来るとは思いますが、まず作業する場所がありません。うちの小屋じゃ小物しか作っておりませんです。」
「そうか、では屋敷の横に空き地があるからそこに作業小屋を作ろう。
紀介、作業場所の横に家を作ってやる。そこに家族ごと引っ越してこい。手間賃として、家族も含めて飯をたらふく食べさせてやる。
小次郎、材木、人足などの手配は任せる。」
「はっ、畏まりました。」
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