音楽やろうぜ Part1
3月4日の正午のこと。浅葱地内千寿村立
「俺と一緒に音楽やってくれませんかーーー!」
職員室の窓から顔を出して眺めているメガネをかけた女性教諭は「71」と呟く。そこにその男の子が駆け寄っていった。」
「
「え~、私音楽仲間じゃないもん嫌だよ。それにさ、いい加減諦めたら?教師が生徒の頑張りを諦めさせるのはダメだってわかってるけど、
男の子は痛いとこを突かれてグウの音も出ない。
「峯田君が音楽好きなのはよくわかるよ。この村で唯一と言っていいほどの音楽好きだよね。それでみんなと楽器とか弾きたいからこうやって大体1週間に一回のペースで先輩後輩関係なく誘ってるよね。でもそろそろわかるよね。少なくともこの村じゃ誰かと音楽はできない。場所に恵まれてないんだよね」
「そんなことないよ!みんな音楽の良さを知らないんだ。楽器だって関わったことないだけで、絶対自分で弾いたり吹いたりすれば楽しめるんだ。だから、そんな機会さえあれば…いいんだけど」
そんな機会はきっとないと解っているのかショボンとする男の子をみて真紀先生はフフっと笑い言い掛けた。
「まあ、君は結局諦めないで勧誘を続けるんだよね。71回目の勧誘活動はこれでもう終わりかな?」
男の子の顔はパァッと晴れて「まだまだ!」と言って走っていった。その姿を真紀先生は見守っている。そこに2人の男の子と女の子が歩いてきた。
「先生、なんで止めないのさ。場所に恵まれてないとか諦めさせること言ったくせに」
「あら、
「これは
長田さんと呼ばれる女の子は手を横に伸ばして服全体が見えるようにして答えた。それに対して四島君と呼ばれた男の子がすかさず「脱線してるぞ」と指摘。
「あ、そうそう先生、なんで止めなかったの?あれまた他の生徒全員に1人ずつ押しかけて勧誘するよ」
「いいじゃない。面白そう」
その答えに2人は頭を抱えた。
「先生は知らないから言えるんですよ。陽介の音楽好きはマジのやつなんですよ。」
「そうそう。だから陽介、1人に最低でも30分はしつこく音楽に魅力とか語ってるんだよ。あれ先生が思ってる以上にキツイんだから」
3人は無言の間を5秒ほどすごした後、口を揃えて言った。
「戦犯だなぁ、先生(私)」
「
場所はとび、人参畑の傍に椅子をたてスケッチブックに茶色の色鉛筆で土を描いている
「陽介静かにしろ!文香さんは今集中してこの畑を描いているんだ。少しは配慮しろよ」
「悪いってそれは。じゃあ改めて、文香先輩、武と桜。音楽をやろうぜ!」
「無理」
そう言って文香はシャッシャッと色鉛筆で絵を描き続ける。武もそれに続いて溜息を吐き答えた。
「そういうことで、俺も無理だ。もうそろそろマジで諦めろよ」
「うぅ、じゃあ桜は?桜っていい声してるからさ、やっぱりボーカルとかむいてるって」
「あの、何度も私を誘ってくれるのはありがたいんですけど…、その、えっと、私人見知りだし、人前無理だから、やっぱりごめんなさい」
桜は目をチラチラ泳がせながら答えた。
「桜、そんなオブラートに包まないで、嫌なら嫌っていいんだって」
「あ、はい。陽介さんごめんなさい、嫌です…」
桜は申し訳なさそうにしながら武の後ろに隠れた。武はそれに対しては一切動じはしない。
「はぁ、桜にキッパリ断られるとさすがにショック。ま、二人のラブラブ現場が見れて満足だわ~」
そう言い残し陽介はセッセと道を走って戻っていった。遅れて冷やかされたことに気がついた武は「おい!そんな関係じゃねぇよ!訂正しろ!」と遠ざかっていく陽介にむかって叫んだ。
「武、うるさい」
「すみません…」
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