第3話 リリー 3



  午前の講義を終え、いつものフードコートにエレクトくんと移動する。その途中、王宮に続く廊下の奥に金髪を見つけた。


  (まただ……)


  挨拶がてら、新作スイーツ情報の確認をしようと思ったのに、廊下の奥に見えた金髪のグーさんの真横、同じ様な金髪王子がべったり張り付いている。


  北国のセントーラから、王子様が二人留学してきた。彼らは双子で、一人は黒髪、一人は金髪の二卵性。


  パッと見て、黒髪は分かりやすい陰キャラ、金髪はグーさんと似たり寄ったりの王子キャラ。

 

  王子仲間だけあって、金髪は見るたびグーさんにべったりいっつもくっついている。彼の警備員ももれなくべったりくっついていて、なかなか声をかける隙間もない。


  あの境会破滅の大事件以来、グーさんとはようやく婚約破棄をすることが出来たので、堂々と安心してフレンドリーに挨拶出来るはずなのに、こうもべったりセントーラの金髪王子がグーさんにくっついていると、なんか割り込みにくいな……ん? まてよ?


  ふとある疑問がわいた。


  男と男がべったりするその先にあるものとは?


  (………………もしかして)


  セントーラって、徹底した女性排他主義国。多様性は一貫して受け付けませんを受付に掲げてる事は勉強して知っている。


  だけどそれは昔の話で、まさか現代においてそれを忠実に実行なんてしないよねって、さらりと読み流したセントーラの歴史。


  そしてここが乙女ゲームの舞台だということも踏まえると、それはつまり?


  BLも、あり得るのか?


  私やフェアリーさんたちのヒロインパワーが足りなかったから、まさか、神は違う方向へ進路変更した?


  『ビーエル……』


  はっ! 口から出ていた!


  エレクトくんが私を不審な目で見ている。


  咳払いしてごまかしてその場をやり過ごす。グーさんと目が合った気がしたけど、とりあえず又の機会にお菓子の新作をねだりにいこう。


  「君がダナー大公国の令嬢か?」


  おや?


  背後に人が。


  以外にも、陰かと思っていた黒髪王子が気さくに話しかけてきた。話してみると、彼はとっても普通な感じ。


  「私の名はファイス」


  王族なのに、私よりも先に名乗ってさっと差し出された手。これはもしや……。


  握手!


  こちらの世界では珍しい。王族や貴族の間でもあんまり見たことないな。そもそも握手する習慣がないんじゃない?


  でも握手以外に考えられない差し出された手。


  「…………」


  まさかこれ。


  握手なんて、ほとんどする機会はなかったけれど、ましてや異性と握手なんて、手に汗握る緊張感だってあるけれど、もしかして、試してる?


  女性排他主義国セントーラ。その王子である黒髪さんが、ダナーのリリエルは握手知らないでしょ? って挑戦状?


  もちろん受けて立つのです。


  私、過去世では様々な情報を、経験していなくても視聴しているのであります。


  知ってるよって、堂々と握り返して挨拶したら、何故かそれを見ていた金髪王子が激怒した。


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