第二回撮影会(バストアップ写真の巻)
(ああ、神よ……これは違うのです。決して不純な目的でこんなことをしているわけではないんです……!!)
その夜、ライオはまたしてもカメラを手に、水着姿のモモを撮影していた。
心の中で神に言い訳をしつつ、罪悪感を抱く彼は、それでもファインダー越しに彼女の姿を見つめ、最良の瞬間を捉えようとしている。
デビュー作であるグラビアが大好評だったことを受け、この勢いのままに新作を撮影しようというモモの提案に逆らえなかったライオは、ベッドの上に寝転ぶ彼女へとカメラを構えながら近付いていった。
「ふふっ……! いつもより近いね? ライオも女の子の体に慣れてきた?」
「き、君がそういう指示を出したんじゃないか……!」
どうにもいやらしい意味に聞こえてしまうモモの言葉と、ファインダー越しに大きく映る彼女の蠱惑的な表情に心臓の鼓動を早めるライオ。
普段よりも近くから撮影を行おうとしている彼は、モモの頭から胸下までを捉えたバストアップ写真で彼女の魅力を捉えようとしていた。
「んっ、はぁ……」
悩ましい表情をカメラに向けながら、モモが甘い吐息を漏らす。
両腕を上げ、頭の上で緩く手を重ねる彼女は、白く美しい二の腕から脇までを曝け出している。
そんな綺麗な彼女の姿に息を飲んだライオは、距離が近くなったことで更に大きく見えるたわわな胸にも魅力を感じていた。
押さえるわけでも、形を変えるわけでもなく、仰向けに寝転がった状態で呼吸に合わせて上下する魅惑の山々とその谷間に視線を奪われていたライオは、ぶんぶんと首を振ると自分を律する。
(へ、平常心! 変なことを考えるな、ライオ!!)
修道士として、色欲を抱いてはならない。性欲に溺れることなんていうのは許されざる行為だ。
自分がモモに女性としての魅力を感じていることはどう足掻いても取り繕えない事実ではあるが、それは性欲ではなく彼女の真摯な態度と美に対する尊敬の念であると言い訳しながら、気持ちを強く持った彼が再びファインダーを覗く。
「あはは、寝っ転がった体勢って楽なように見えて神経使うね。距離も近いから、恥ずかしいや」
「ご、ごめん。急いで撮るよ」
「ううん、気にしないで。ライオがいい、って思った私の姿を撮ってくれた方が嬉しいからさ」
ふわりと優しく微笑みながら、慈愛に満ちた眼差しをカメラへと向けるモモ。
ファインダー越しに彼女から見つめられたライオの心臓が更に激しく早鐘を打ち始める中、彼の指は自然とその瞬間を捉えるべく動いていた。
「んっ……!? ええ、今ぁ? 不意打ち食らっちゃったなあ……!」
至近距離から見つめられても恥ずかしくないようにしっかりと手入れされた両腕。
大きさと柔らかさ、形の良さを一層アピールしている巨乳。
そして何より、女性としての温かい雰囲気をほんのりと放つ聖母のような優しい笑みを浮かべたモモの表情を永遠のものとすべく、ライオがシャッターを切る。
会話の最中に撮影されると思っていなかったモモは不意打ちを食らって苦笑していたが、できあがった写真を見た瞬間、その表情を驚きに染めた。
エロスと優しさ、女性が持つ二つの魅力が引き出された自身の姿を目にした彼女は、その一瞬を逃さず捉えたライオへと賞賛の言葉を投げかける。
「すごいじゃん、ライオ! 私のこと、こんなに綺麗に撮ってくれるだなんて……! もう初心者の域を脱してるよ!!」
「そ、そうかな……? 僕の腕より、撮影される側が魅力的だからこそ、こういう写真が撮れるんだと思うけど……」
「なになに~? 私のことをおだててどうするつもり~? これ以上は何も出ないよ~!?」
正直な想いを言葉にしただけなのだが、その言葉を受けたモモは上機嫌に微笑むと一層やる気を見せ始めた。
こういう、モデルをやる気にさせる技術もカメラマンにとって必要な技術であり、ライオは性格上、そういった才能を持っているようだ。
「んっふっふ~! そんじゃあ、バストアップ写真の撮影が終わったら、今度はお尻を強調した写真を撮りましょうかね! この街の男の人たちがどっち派なのか、調べるのも面白そうじゃん!」
「あ、あは、あははははは……」
新作の撮影は順調で、内容も期待できる。モモもやる気を漲らせているし、ライオも実は彼女を撮影することに歓びを感じ始めていた。
だが……自分たちの関係は綱渡りの危険なものだ。そして、モモも教会から目を付けられてしまっている。
このままではいけない。修道士として、彼女の行いを止めなければならない。
けれども、本心としてはモモを無理に別の職業に就かせて、グラビアアイドルになるという夢を諦めさせることは嫌だと思っている。
どうすればいいのだろう? どうすることが正しいのだろうか?
答えの出ない疑問に苦しみながらも、今だけは……目の前で一生懸命にポーズを取るモモの魅力を引き出し、彼女を撮ることに集中しなければと、ライオは迷いを振り払ってファインダー越しに映る彼女の姿を写真に収めるべく、シャッターを切り続けた。
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