戦国異世界群盗伝

犬時保志

第1話 プロローグ

「この戦もオウナガ軍の勝利だな!皆オウナガの登り旗立てろ!」


 最近連戦連勝、日の出の勢いのオウナガ、俺達モウリ群盗団はアズチ戦の戦場で何時もの荒らしを遣ってる。

 何時もの様に、勝利方の登り旗を立てて、巾着袋サイフ漁りに名刀漁りやってた。


「おっ?こいつの剣、すんげぇ業物だ!」

「巾着袋に大判20枚入ってるぞ」


「おい小僧!その武将倒したのはお前か?おっ?たしかモウリ٠ヨリだったな!」

 突然の誰何に、俺はシドロモドロになった。

「お、おぅ!俺達で倒した…」

 嘘も方便「戦場跡荒らししてます」何て、馬鹿正直に言えるか!


天晴あっぱれであった!!探したが何処にも見えなんだ、ナガス城城主、タケ٠ツヨリを討ち取るとは!首を持って着いて参れ、褒美を取らせる!」


 声掛けして来たのは、親父達の埋葬の時会ったアズチ٠オウナガ、殿様本人だった。

「あの時一瞬の出会いの俺を覚えていたのか?」


 気味が悪いが、配下のハンベが切り落とした首を、槍で突き刺し担いでアズチ٠オウナガと、お付きの偉そうな男達に着いて行った。


 殿様自ら案内したのは、天幕を貼った陣だった。

 居並ぶ武将達に、借り褒賞の発表が始まった。


 俺は親父の遺品の鎧に、イマワの鎧から剥ぎ取った装飾を着け総大将の格好、腹心ハンベはイマワの豪華な鎧を装着、コブにセタも大将風の鎧を装着、足軽50人を引き連れている。

 一端いっぱしの武将に見えるだろう、まさか戦場専門窃盗団には見えんだろう。


「最後にタケ٠ツヨリ、ナガス城主を討ち取った、モウリ城主モウリ٠ヨリに、『ナガス城』を与える!

 この者の父殿は、先のハザマの戦いで奮闘、惜しくも戦死した!

 モウリ٠ヨリは、先のイシ山合戦時大活躍で我が軍を勝利に導いた!

 親子二代の天晴れな働き!儂は報いねばならぬ」


 モウリは砦で、城なんて上等な物じゃない、殿様は俺の博着けのつもりか、小城の城主と紹介しやがった。


 褒美と言えば、前と同じ大判50の切り餅だろ!オウナガがこれ程非常識な男とは!

 城なんて褒美に貰っても困るぞ!


 これを切っ掛けに、俺モウリ٠ヨリの下剋上天下盗みが始まった。

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