おまけ4 3年目の謀反くらい……大目にみるか‼️
イオの声は比較的高い。
凄みを出そうと押さえても、自然と前方に響いてしまう。
「おい、おっさん。」
騎馬兵5000はけっこうな場所が必要だから、最後尾にいたグラン侯爵には何が起こっているのか検討もつかない。
戦線が動かない。
ただ苛立ち吠えているところに、背後からの一言だった。
「⁉️」
慌てて振り向こうとして、出来ない。
背後にある人物は侯爵を羽交い締めにし、あまつさえ銀の刃を首筋に突きつけていた。
僅かに動こうとしたさっき、軽く表面を切ってしまう。
血が流れる。
動けない……
目だけ必死で動かした。
見えたのは、刃と同じ銀色の髪。
「イオ・リバーウェル……」
かろうじて口にする侯爵に、
「当たりだ、おっさん。お前は物分かりが悪いから、いつもの火魔法よりわかりやすい、ナイフにしたぜ」と、嘯いた。
イオが侯爵の背後に転移して来たのだ。
そのまま大将首を押さえ、辺りにいる兵士達に言う。
「お前ら‼️武装解除して、鎧も服も脱いで、下着姿で投降しろ‼️それなら降伏を認める‼️でなければ、オレの敵だ‼️」
言われた瞬間‼️
そこにいた全ての将兵が、慌てて武器を放り出す。
反逆なんてありはしない。
グラン侯爵その人以外、如何に勝算の薄い馬鹿げた戦いかわかっていた。
グランの長男、次期グラン侯爵も、婿にいった次男、ユーザ子爵も、ただただ慌てて下着姿になり投降した。
誰かが助けてくれると、少しだけ期待していたグラン現侯爵は失望し、こう言う時のために用意した起死回生の一手を打つのだ。
「聞け‼️伯爵‼️我が領にはまだスラムがあるぞ‼️必ずやスラムの建て直しをする‼️それで今回の件は‼️」
レッドローズビル侯爵家の顛末を知っていた。
だからこそだったが……
「ふざけるなよ、おっさん。」
声の温度が急激に下がる。
「う……ぐわっ‼️」
首に刃が食い込み始めた。
激しく痛む。
血が流れ出す。
「何が我が領にはスラムがある、だ‼️切り札のつもりか知らんが、お前の怠慢が招いたか結果だ‼️どうやったらそんな寝言が言える⁉️」
そのまま思い付いたイオは、侯爵を抱えて転移する。
いつでも殺せる。
その、寒気がするような光景に。
残された将兵は、この隙に逃げ出したりせず、ただ黙々と武装解除を続けるのだ。
逃げるとか。
そっちの方が怖くて出来なかった。
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