第33話 白銀のSっ気100%(本気100%だと国が亡びます)

 イオはフェミニストではない。

 前世が女性であるせいか、一般の男性のテンプレが当てはまらない。

 手の内にあるものは老若男女問わず大切に、特に深い関係を持たないものには誠意を持って、ただし敵対するものには男女問わず一切の容赦がない。

 白銀の刃は、マリアンの左頬から鼻を通り右頬に抜けた。

 顔に大きく引きつれた、火傷を伴う傷が出来る。

 マリアンはつり目の、いわゆる気の強そうな印象を残す女だった。キレイな方だ。そこに侯爵家の財力を注ぎ、磨きあげていた。

 自分の容姿に自信があった。

 「嘘⁉️まさか⁉️」

 こだわっているからこそ、まだ生々しい、痛むはずの顔に触れて傷を確認、

 「いやぁ‼️私の顔がぁ‼️」と、世界の終わりのように叫ぶ。

 彼女にすれば死ぬより辛い、それなのに、

 「あー、先輩。顔に線入っちゃったな」と、煽るイオ。

 「そこまで酷い傷だと、治せるのはお前が大嫌いなうちの妹と、お前を大嫌いなオレくらいだ。」

 言われた言葉の意味よりも、『治せる』事実にパッと顔を上げたマリアン。

 「見てろよ。」

 イオが侯爵を見つめた途端、その右手が光を放ち……

 「え?」

 「嘘⁉️」

 一瞬で治った。

 次の瞬間‼️

 「じゃ、父子、お揃いにしとこうか。」

 イオの刃が侯爵に迫り、

 「ぐわぁ‼️」

 父の顔も真一文字に切られたのだ。

 ミウを、サチを、傷つけようとしたクズだったが、曲がりなりにも父親だ。

 「お願いだ……いや、お願いします。せめて娘だけども」と、土下座しての懇願を、

 「イヤだよ。」

 フェミニストではない、しかも敵には一切の情けを掛けない、イオは即座に切り捨てる。

 絶望する侯爵父子を尻目に叫ぶ。

 「あー、まだ暴れ足りねえ‼️」

 音の魔法を使い、

 「今すぐ逃げろ‼️この家壊すぞ‼️」と、全館に響かせると、

 「イオ‼️ちょっと待ちなさい‼️」と、少女の声が返ってくる。

 はからずも……

 兄妹が同じ魔法を使える証明にはなった。


 5分後、

 「もういいよ‼️」と言う、ミウの声を合図に。

 イオが広範囲に加重して、侯爵邸が崩れ落ちた。

 まるで悪い冗談のごとく……

 侯爵と娘のいた執務室の床だけが、1本だけ残された柱に支えられ、不細工な積み木みたいに揺れていた。

 イオから音の魔法で連絡を受けた、ハルトが現場に駆け付ける。

 不安定過ぎて動くことも出来ない。

 抱き合って震える父子をチラ見したハルトは、

 「また、力一杯やったね、イオ君」と、苦笑い。

 ただすぐに真顔に戻り、

 「まずいことになった」と、頭を掻くのだった。

 

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