第23話 10年ひと昔といいますが、実際は3年も経てば忘れます

 今から6年前……

 イオとミウが出会って4年ほどした頃だった。

 妹ということにした、ミウを王妃様候補にするつもりのイオは考える。

 スラム横の3DKに住み、オーガの魔王種討伐の報奨金も大量にある。食べていくのに苦労はない。

 でも……

 王妃様にするのなら、体裁は整えないといけない。

 いずれ爵位は金で買って、勉強が好きなミウだから、家庭教師もつけようか……

 ならば金はいくらあってもいいと言うことで、実際Sランクの冒険者であることだし、少年は毎日荒れ地に出て魔物討伐に勤しんだ。

 他の冒険者の邪魔にならないよう、低ランクの魔物は放置した。主にCランク以上、巨大蛇だの巨大サソリだのを索敵で探し、倒す。

 月に2、3体しか出てこないが、素材代は白金貨までいかなくとも軽く大金貨数枚になった。

 少年が危険な魔物を一掃していった結果、王都周辺がいつになく安全になった。

 そのため、馬鹿な輩が顔を出す。

 イオの魔王種討伐も、貴族の腕を叩き切った事件も知らない、いや認めたくない、嘘だと言い始める浅はかな連中だ。

 のど元過ぎれば熱さ忘れる。

 イオが王都に来て実際にその対応をしたギルマスから数え、冒険者ギルドのギルドマスターは4人目だった。

 彼……ショーン・マイルズ子爵家3男がそのタイプだった。


 子爵家とは言え、後を継ぐ長男以外は縁があれば他の貴族の婿に行く、それが無ければ平民になるのが常だ。

 ショーンは今は子爵家の一員だが、いずれ独り立ちするしかない。

 せめてもの計らいで、親が冒険者ギルドのギルドマスターにねじ込んだ、甘やかされたお坊ちゃん。

 お坊ちゃんは自分の意に沿わないものは気に入らない、理解出来ないものは理解しない、そういうものだ。

 で、結果とばっちりが来たのがサチだった。

 当時17歳でB級の鑑定士だったサチに、

 「こんな小娘がB級なんて、絶対に間違いだ‼」と絡んできた。

 鑑定士にS級は無い。最高でA、国に3人だけ。B級も10人弱しかいない。

 サチはその多めだった魔力量と、寝る間も惜しんで文献を読み込んだ努力とでのし上がったのだが、馬鹿な(親が)子爵様には理解出来ない。

 サチは、スラム街時代一緒だった2人の少女の面倒を見ている。

 アルルとローサを鑑定士として登録したばかりで、面倒だと投げ出すのは現状無理な相談だった。

 最悪な仕事相手。

 これまでの実績で、仲間達は気にするなと言ってくれるが、ギルドのトップが敵に回ると……

 「ふうっ。」

 ため息の止まらない帰り道、

 「あれ?どしたの、サチさん。元気ないじゃん。」

 偶然会ったのが、昔馴染みのS級冒険者、イオだった。

 目が点になる。

 少年は、自分の10数倍ありそうな、巨大な魔物を背負っていて……

 

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