第11話 そうだ‼️◯都行こう‼️

 あの日から、王宮の風景が離れない。

 夜、眠ろうとベッドに潜り込むたび。

 おとぎ話から抜け出たような美しい外観、毛足の長い絨毯に、豪華な調度品、などなど。

 目の前にちらついて、イオは落ち着きを無くした。

 16の女の子だった頃の感性だ。基本女の子はキラキラ好きで、『お姫様』願望がある。

 今イオは男の子で、気付かないまま現実の体に心が引っ張られ始める。

 そこに齟齬が生まれ、少年を落ち着かなくさせるのだ。


 イオは、王都に家を買った。

 王宮周りの貴族街は候補にも上げず、むしろスラム街に隣接する、市民街の端っこだ。

 前世的に言えば、2階建て中古住宅、3DK。

 1人で住むには広過ぎるが、前世の住居と間取りが同じで即決だった。

 誰も信じられないこの世界で。

 10日の馬車旅のお陰なのか?イオはハルトを信用している。

 国家の危機に、寝ずの強行軍で駆け付ける行動力。キラキラの外見に穏やかな性質、しかし思ったよりもシンが強く、したたかでもある。

 信じても大丈夫だと思った。

  だから助言通り、冒険者ギルドに登録した。

 ギルド登録は本来は12歳以上だが……

 オーガ討伐の連絡がいっているのだろう、すんなり登録出来た。

 貰った冒険者カード(と言う名のネックレス型ドッグタグ)は金色で、S級と書いてある。

 「これはさすがにやり過ぎじゃないか?」

 ぶらぶらとドッグタグを振りながら尋ねると、

 「これでいいんです」と言われた。

 「6歳を登録しただけでもやり過ぎなのですから、この機会に全てやり過ぎるのが正解です。」

 そう言うものかと思う。

 住宅はギルドの斡旋で、白金貨1枚で大金貨3枚のお釣りがきた。

 ん?オレ、白金貨何枚持ってる?

 スゴい金持ちじゃない?

 とは言え全属性のイオだから、当然空間魔法もいける。

 余りは空間収納に放り投げた。


 久しぶりに屋根の下で眠れるようになり、食べ物にも不自由なく、生活が落ち着くほどに王宮のきらびやかさを思い出す。

 今のイオなら荒れ地に出て魔物を倒しまくれば、王宮に匹敵するくらいの贅沢は出来ようが……

 それは違うと思った。

 女の子的憧れは、つまり玉の輿だ。

 友達や姉が勝手に申し込んでこそのジャ◯ーズだ。ハロ◯ロだ。

 でも、今は『男の子』で。

 モヤモヤし、ウトウトし、目覚めて不意に‼️

 「そうだ‼️藤原氏だ‼️」

 前に日本史で習ったあれだ。

 平安時代、藤原氏は自らの娘を天皇に嫁がせ、次代の天皇(男児)を生ませることで外戚として政治に口を出した。

 イオに政治的野心は無い。

 感覚としては、ワンクッション挟んだ玉の輿狙いだ。

 ハルトの嫁を見つけよう。

 歴史上の藤原氏は『自らの子供』を使ったが、年齢に無理があり過ぎるイオは、町から容姿に優れた少女を見つけ出し、完璧な王妃様候補を作り出そうと思った。

 マイフェアレディ計画だ。

 明日からS級冒険者による、完全なる能力の無駄遣い、いい女漁りが始まる。


 完全に、発想が『女』のそれではない。

 心が体に引っ張られている事実に。

 今はまだ気付かないイオだった。




 

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