第8話 許すか許さないかなら、許すわけがない
急に家に兵士が踏み込み、イオの両親は混乱した。
ただ手荒く捕縛されて、
「俺たちが何をしたと‼」と叫んだ途端、父親は全力で殴られて昏倒した。
事態を混乱させた原因の1つである彼らを、兵士達も憎んでいた。
「……」
母親は声も出せず震え、あの後出来た乳飲み子が異変を察知し泣き喚く。
それこそ親と共に切り捨ててしまいたかったが、話題の子供は両親を憎んでいても、まだ見ぬ妹まではどう思うのかわからない。
意に添わなけらば国を滅ぼしかねない魔法使いだ。
兵士はギリギリで我慢し、乳飲み子を保護したのである。
自分の捨てた子供が強大な魔法使いになったと聞いて。
頭がお花畑な両親は、実は喜んでいたらしい。
彼らのイメージの息子は泣き虫の甘ったれ、自分達は本当の親子なんだから多少の間違いは大目に見てもらえる、そう思った。
ただ息子の前に引き出され、その青い目を見た時。
実の両親である自分達を、まるで感情のない、路傍の石を見るような目で見ていた時。
都合の良い妄想は、しょせん妄想でしかないと心に刻む。
「わしは知らなかったのだ‼」
最初に声を発したのは図々しくも司祭だった。
瞬間無詠唱で放たれた風魔法が、司祭を吹き飛ばし背後の家に叩きつける。
「ぐふっ‼」
司祭は血を吐いて呻いた。
「ああ、お前この程度で壊れるのか。知らなかったわ。」
司祭の言葉を借りたセリフで、いつの間に倒れた男に詰め寄っていた、イオが処分を言い渡す。
「司祭。お前はどうしようもない無知で、おそらくオレ以外の子も間接的に葬っている。『悪魔の子』だってな。
だからって処刑は面倒だ。
お前、オレがしたように1年間、誰の手も借りず町にも寄らず、魔物の蔓延る荒れ地で生き延びてみろよ。それで許す。」
それは実質的死刑宣言だった。
「嫌だ‼許してくれ‼」と叫んでいたが、彼に『悪魔の子』宣言された子供達は、決して許されなかったことを考えれば至極妥当だ。
続いて、イオが両親に聞いたのは、自分をいくらで売ったのか?
「大金貨3枚です。」
さすがに極まりが悪かったらしい、なかなか答えなかった両親に代わりギルマスが言った。
「ちなみに相場は金貨5枚です。金貨10枚で大金貨1枚となります。」
なるほど、見目形の良いイオは、なかなかの好物件だったらしい。
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