第2話 おしり合いにはなりたくない
イオは、ごく普通の平民の家に生まれた。
よくあるスラムスタートではなく、商会で下働きをする父親と、家の裏に家庭菜園を作り、生活を助ける母親。
ごく当たり前の日々が潰えたのは、1年前の、何かを象徴するような曇天の『祝福の儀』の朝だった。
「悪魔の子じゃ‼」と、司祭は言った。
朝早くから教会へ連れて行かれ、水晶球に手を置くように言われた。
この国の子はほぼ例外なく、5歳で魔力判定を受ける。
水晶球には、それぞれの子が持つ属性が色で浮かび、また浮かんだ色の大きさによって魔力量がわかる。
9割がた1属性。たまに2属性。
水は青、火は赤、風は緑、土は黄、癒しは光、などなど。
それ以外にもあるらしいが、正直よくわからなかった。
そして、少年は魔力検査に臨み……
『悪魔の子』と言われ、よく意味は分からないが褒められていないことだけは分かった。
イオは焦る。
水晶球は真っ黒に染まり、慌てて出力が上がったのだろう、あまつさえ割れた。
絶大な魔力量。
そして真っ黒な不吉な魔力が……
「その子供を捨ててしまえ‼」と、司祭が叫ぶ。
優しかった……
いや、優しいと思えていたイオの両親は、庇うことなく息子を手放す。
捨てるよりはと、奴隷商に売った。
奴隷商は男色の気があり、その上イオは、本人は自覚していなかったが飛び切りの美少年だ。
青み掛かった銀髪に、整った顔立ち。
海のように澄んだ青い瞳。
いきなり組み敷かれた。
何が来るかわからない。
ただ、奴隷商が下半身を露出させたのを見て‼
少年の中で魔力がはじけた。
司祭は『悪魔の子』と言ったけれど……
黒い魔力は黒ではない。
イオだけがわかっていた。
彼は全属性に適性がある、極めて稀な存在だった。
司祭にはまがまがしい黒に見えた。
イオには……
各色混じり合った、さながら虹のようだった。
衝撃ではじけた少年の魔力は、無秩序に全属性が放出され打ち消しあえばよかったものの、相反して爆散した。
正も邪も、水も火も、土も風も。
奴隷商が店舗としていた3階建ての建造物が、中にいた人ごと爆散した。
犠牲者は数10人に上り、少年は町を出て荒れ地に逃れる。
町の外には魔物もいて、暮らしていく馬鹿などいない。
完全に目覚めたわけではなかったが、魔法も一部使えるようになった。
少年は魔物よりも殊更危険な、人間と関わらず暮らすことを決めた。
そして1年。
冒頭に戻る。
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