王妃様の作り方

@ju-n-ko

第1話 体に余計な突起物がついた

 転生した。


 ……


 いきなりなんだと思われようが、今気づいたので仕方がない。

 これ、あれだ。テンプレってヤツ。

 命の危機に瀕した時、または本来の体の持ち主が死亡、またはその生を諦めた時、前世の記憶が返ってくる。


 はは、確かに命の危機だ。

 目の前にはオーガ。身長3メートルくらいあるか?筋骨隆々、大きな口。頭に角をつけている。

 正に『鬼』。


 ただこれ、上位種ってヤツだ。

 普通のオーガは身長2メートルくらい。姿形は目の前のオーガと同じ、筋骨隆々、角付きだが、肌の色は赤黒い。

 目の前のヤツ、大きさも違うが肌の色も違う。黒光りしている。メタリックシルバー。Gのつく虫の色より、少し明るい。


 一戦交えた直後に、全てを諦めたらしい。

 森ではなく、岩だらけの荒れ地。オーガに吹き飛ばされ、少年は腰を抜かしたように座り込んでいた。

 立ち上がる。

 右腕はブラブラで動かない。おそらく粉砕骨折だ。

 絶え間なく続く左足首の疼痛。

 立てたけど……

 おそらく折れるか、ひびが入っている。

 1番酷いのが腹部。爪で真一文字に切り裂かれ、見えてはいけないものが見えていた。

 無事だった左腕で抑え、こぼさないように庇う。


 確かに、諦めたくなるほどの満身創痍だった。


 ただ、この期に及んで気になるのは?

 足の間の感触だ。

 6歳になる今日まで親しんできたそれなのに、転生で中身が入れ替わったせいだ。

 なんか、挟んでるみたいでめっちゃ気になる。


 って言うか、何で下着はいてないの‼

 ああ、擦り切れたのか、着の身着のままだったから。

 まともに食べられていないから、5歳のころから体のサイズ、変わってないじゃん‼

 ズボンが大き過ぎるから、右にも左にも収まらない。

 動きにくい……


 「って言うか、諦めんなよな、イオ。」

 自分自身に呟く。

 お前、お尻の危機の時はブチ切れられたくせに、オーガ風情で投げ出すな。


 少年の名前はイオ。平民の上、今となっては家庭から縁も切れている6歳児。

 家名はない。


 中身の名は河合糸(カワイイト)。

 16歳まで、日本の女子高生だった。


 話は1年前にさかのぼる。

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