第28話 ソフィアは再会した
久しぶりに義父様の領地。
モンスターとは遭遇することもなかったし、領地の周りにもそれらしき姿が一切見えない。
私の力で本当に寄せ付けないようにしているのだなと実感してきた。
馬車は領地内へ入り、真っ直ぐに義父様の住む伯爵邸へと進んでいく。
領民たちは『なにごとだ』といったような感じで驚いたり騒ついているが、馬車は止まることなく進む。
そして、あっという間に伯爵邸へ……。
「ソフィア様がご挨拶をされるのですね?」
「はい。できればそうさせていただけるとありがたいなと」
「ですが、気を付けてください。この領地内では結界がはられているため、魔法が使えませんので」
「大丈夫です。こうしてアーヴァイン様がそばにいてくださるのですから」
アーヴァイン様は顔を赤らめながら頬を掻いていた。
私はふふっと笑いながら馬車を降りる。
「ソフィア様はいったんお待ちください。まずは外へ誘導するためここは騎士団にお任せを」
「はい、その後で挨拶すればいいのですね」
「さぞ驚かれるでしょうね」
騎士団の一人がドア越しへと向かう。
最初に中から出てきたのは義母様だった。
最後に会った日よりもどういうわけか身体は少し細くやつれているように見えた。
「なんの用です?」
「王宮から知らせで参りました。ゼノ伯爵を……」
「あら、特別報酬でもいただけるのかしら? そうでもしてくれないと困るのよ。ただでさえ最近はろくに食べるものがないのだから」
「至急ゼノ伯爵を」
「待っててくださいね」
義母様は喜びながら家の中へと戻っていった。
これからどうなるかも知らずに……。
しばらく待っていると、ようやくゼノ伯爵が姿を表した。
「待たせてすまぬ。いったいなんの……なんの……なぜ!?」
騎士団たちと一緒に私もいることに気がついたようで、まるで幽霊を見るかのような恐怖に引きつった顔をしている。
構わず私はあえて微笑みながら挨拶をした。
「お久しぶりですね、おと……ゼノ伯爵」
「本物……? それとも魔法かなにかで幽霊にでもなったのか……!?」
「本物ですよ。あのときもかろうじて生きていましたからね……」
「ぐ……」
ゼノ伯爵に殺されかけたことはあえてなにも言わないでおいた。
だが、思ったとおり自分からはなにも自白はしてこない。
私はあくまで生きているということを見せつけたかっただけだから、これ以上はなにも言わないでおく。
あとは騎士団たちの仕事なのだから。
「言っておくが、私はなにも悪くないのだぞ。魔法の使用を禁止している領地に魔法を使える女が来てしまったのだからな」
「まだなにも言ってませんが」
ゼノ伯爵はそうとう焦っているようだ。
騎士団も呆れている。
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