第27話【ゼノ伯爵視点】悪夢の再会
「領主様! 奇跡ですよ! 今まで領地の周りを囲んでいたモンスターたちが一斉にどこかへ移動していきましたよ! まるで逃げるように」
「ほう。ついに諦めたか。では再び農業もできるのだね?」
「はい。このまま平和に戻るのであれば、すぐにでも種まきから始めたいと思います」
これで我が領地も平和に戻る。
すでに食料が底を尽きる危機に迫っていただけに、このタイミングでモンスターどもが諦めてくれたのは助かった。
だが、疑問も残る。
「いったいなぜ……、消えたのだろう」
「それはわかりませんが目撃情報によると、なにかに怯えているような表情を浮かべていたようです。まさかとは思いますが、とんでもなく強いモンスターでも現れてしまうのでしょうか……」
「さすがにあり得ないだろう。とにかく、これはチャンスだ。今のうちに食料を確保できるよう頼む」
あれだけソフィアの復讐のために集まっていたモンスターたちがいきなりいなくなってしまうなど考えにくい。
もしくは、なにかしらの理由でソフィアが既に死んでいることをモンスターたちが気がついたとでもいうのだろうか。
いやいや、そんなことはない。
だが、どのような理由であれ、これは領地と私にとっての好機である。
ソフィアを葬ってから妙なことが多かったが、ようやく平和が戻ってきたのだ。
この日、私は家で派手に祝福パーティーをして宴を楽しんだ。
♢
「王都から使者が来ていますわよ」
「うむ、わかった。すぐに支度して向かう」
朝方から騒々しい。
妻から報告を受け、急ぎ支度して出迎える。
それにしても、モンスターがいなくなった途端に王都の者たちか。
これは良い機会だから、食料不足になってしまった旨を報告し、物資の支援も要請するべきだろう。
そもそも、王都からいったいなんの用事で来たのだろうか。
「待たせてすまぬ。いったいなんの……なんの……なぜ!?」
「お久しぶりですね、おと……ゼノ伯爵」
なぜ死んだはずのソフィアがいるのかわからず、まだユメの中で悪夢でもみているのかと思っていた。
だが、これは現実だということをすぐに知ることになるのだった。
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