第4話 の洗礼
西暦2023年7月14日 朝0:00 (夢魔の世界では昼)
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1階層〜北街〜
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東のドームを出て、受付に戻りそのまま今度は北の通路に向かう。ジェスの指示で、訓練になるからとザックはそのまま、僕らの背には変わらず背負われていた。疲れもあるのか、つい息が上がってしまう。
「さて、諸君見えてきたぞ。」
ジェスの言葉と共に。ドームの先の光に包まれ、そして視界が開ける。そこは奥の塔まで続く街にのようになっていた。多くの夢魔たちが行き交い、都市の外の商店街にも負けないほどの活気に溢れている。違うところがあるとすれば、ここにある店は、商店街で見たこともないようなものばかりだった。たとえば、武器屋。店頭に並ぶ弓、剣、そして銃だろうか?あっちは、道具屋のようで縄や、テープ、寝袋などその中にも魔除けの像のようなものもあり、用途がよくわからないものがたくさん置いてある。
「何だここ!わーすげぇー!」
エスタフは、駆け出して道具屋に向かっている。「あっ、エスタフくんちょっと!」といいライナスが追いかけていく。それを見送っていると、肩に手が回され、ジェスが話しかけてきた。
「クロードくん、俺たちは俺たちで回ろうか。」
断ろうにも、狼のような目に見つめられ「はい」としか言えなかった。横目で見ると、ライナスはなんだが、丸くてふわふわした何かを持ち上げてライナスと話している。楽しそうでなによりだ。…是非変わってくれ。ジェスがライナスに「ライナス、飯は塔の近くのバイアス亭な」と一言言うと反応も見ずに、歩き出す。今はホルダーが夢の中にダイブする時間にかかってきているのか、まばらにしかいない。
偶にすれ違うのも、商人といった風体の人が多い。後は荷物を運ぶ行者か?
ジェスが連れていってくれたのは酒場だった。扉を開けるとそこは活気に溢れている。あまり外で見なかったホルダーらしき夢魔がチラホラ見える、ただ明らかにガラが良くない。丸テーブルを囲み、夢魔たちが酒を煽っている。タバコだろうか、煙もひどい。つい鼻を摘みながら、ジェスについて歩く。バーカウンターの近くの壁の張り紙には、”麻薬の夢の種子募集〜1g1000盤絵~” ”ラブドール〜交渉20万盤絵から〜”と書かれている。
「気になるか?」
ジェスが話しかけてくる。気になると言えば気になるので頷く。周りの目はまるでこちらを値踏みしているようでどうも居心地が悪い。全員が腰につけているのものは何だろう?腕くらいの太さの筒が縦に何個も差し込まれている。
「ああいう張り紙は、BUG内の各店が募集してるんだ。武器屋なら武器を、飯屋なら飯だな。こういう場所で売れば、実績にはならないが金にはなる。BUGも店を容認しているのにはまぁいくつか理由はあるんだが、それはまた今度だな。」
そういうとジェスはカウンターに割れたコインを置く、一階層で見た太陽によく似ている気がする。目出し帽を被った定員がコインを受け取ると、上と下をじっくり鑑賞した後に、小さな箱を取り出し、中に入れる。箱を閉じるとカシャっという音と共に箱から何かを取り出したようだった。
「あれは何を?」
「…うん?あああれか、」
頬をポリポリとかきながらバツが悪そうに、こちらを見てくる。
「う〜んそうだな…」
店員がこちらをじっとみて静止しているのがわかる。触れてはいけないことだったらしい。
「…じゃあ、別の質問で。何を考えているんですか?というか、何でこんなところ来たんですか?」
そんな僕の問いに、ジェスはニヤリと顔を歪めた。
「クロード、失敗をしなければ、いつか大きな失敗に出会って殺される。同じように悪い場所を知らなきゃ、大きい悪いものから逃げられないからだよ。」
「…エスタフは」
なぜ僕だけなのか気になりついそんな風に問う。
「アイツはアイツで今、ライナスがやってるさ。午後はただの案内だと思ったろ?」
「というかそういう風にライナスさんが言ってましたよ…あの人、実は怖い人だったりします?」
何だあの人と思いながら、げっそりとした顔が出てしまう。
「はは、アイツは天然も入ってるからな。悪気はないと思うよ、多分今も何にも考えずに案内してる。」
「いや、本当、本当に怖いです。」
おい、と店員に声をかけられ、カウンターの奥の扉に促される。その先は不気味なことに両側に赤いカーテンが掛かっており、遠くに扉に続いていた。
ゴクリッ
唾を飲み込む。胃から何かが迫り上がっているのを感じた。臭い…まるで、何か匂いを隠しているかのように不自然に香が炊かれている。
カーテンの奥はどうなっているんだろうと思い手をかけようとすると、急にジェスに手を掴まれた。
「開けるな」
目にハイライトが入っていない。暗闇を孕んだような目でジェスはそれだけ言うと、また奥に進み始める。黒い奥の扉を開けるとそこは、天井からランプが吊り下がった少し薄暗い空間だった。占いの館といえばいいのだろうか?神秘的というか、怪しい雰囲気がある。ここは少しだけ匂いがマシだ。ジェスはテーブルに一歩歩き出し、部屋を見渡す。
「バフィン!」
「うるさいね!叫ばなくてもわかってるよ。何かようか、ジェス少年。」
入り口に立ち尽くした僕の耳元でいきなり声がして、驚きのあまり耳を押さえ、後ずさる。高い背、頭から先にかけた長いベール長いスカート、そしてベールに隠れた顔から少しのぞく長い鼻。…魔女。まさにそう言ったイメージだった。
「少年はやめろと言っているだろ。」
「ひひひ、私から見ればあんたは餓鬼そのものさ、青とした青、若いリンゴさね。で、その子を売りにでもきたのかい?」
そう言うとジェスに目を向ける。わずかに光る瞳孔がジェスの喉元を捉えている。
売る?売るって言ったのか?夢魔を?売ってる?
「冗談やめてくれ。純粋なんだ、信じちゃうだろ。」
魔女は口を歪ませ、こちらをじっとみてくる。
「バフィンだ。初めましてだね、名前は?」
「…クロードです。クロード・セイ。」
「素直でいい子だ。…わかったよ、ジェスこの子には手を出さない。ただわかってるね?」
ゾッとするような笑顔に寒気がする。蛇に睨まれたカエルは恐怖のあまり動けなくなるというが、きっとこのような気持ちなのだろう…するとジェスが目線を切るように立ち塞がる。バフィンはジェスの目をみつめ、チッと舌打ちを打つと奥の詰まれた本の山になった机に腰を下ろす。
「もちろんだ。」
その答えに満足したように頷くと、マルコは引き出しの中から複数の瓶を取り出す。不透明で中は見えないが大きさはバフィンの顎の高さくらいまである。
「こっちにきな。」
それをみて、ジェスは少し不満そうな顔をした。どうやら想定と違ったらしい。
「ザラーをくれ。」
「悪いねザラーは品切れさ。ヤドならあるよ。」
そう言って、瓶を顔の前で振る。
「じゃあヤドでいい。」
簡潔にそういうと、ポケットから複数の小粒の夢の種子を取り出して机に置く。バフィンは数を数えるとふたつ瓶をこちらに渡してきた。そうして、クロードを見やり、
「あの子にあげるのかい?」
「そうだ。」
「随分と趣味の悪いプレゼントだね。」
「ほら、クロード」
そういうとジェスがこちらに何かを投げてくる。15cmくらいの高さの瓶の中には、手が入っていた。
「え?…わぁ!!!」
つい、手を離して投げてしまう。ジェスは落ち着いてそれを受け取り、また僕の手に戻してくる。
声の震えが止まらない。ここはもしかして、来てはいけない場所だったのじゃないだろうか。と言うか、最初からわかってたここは来てはいけない場所だ。もしかして、自分もこんな風にバラバラにされて売られてしまうのかと想像してしまう。「あっ」とか「うっ」と声が漏れる。緊張と混乱で訳がわからなくなっているのだ。それを落ち着かせるようにジェスの手が背中に添えられる。
「落ち着け、これはスペアだ。お前が夢の中で体の一部が欠けた時助けてくれる。」
「……スペア?」
そう問いかけると、ジェスはゆっくりと背中をさすってくれた。バフィンは何だがおかしなものを見るようにこちらを観察している、君がわるい。にっこりと笑うと
「説明は外でやりな。さぁ、さっさと出ていきな。次の客が詰まってるんだ。」
そう言うと、ジェスと共に店の外まで出されてしまった。先ほどの瓶は鞄の中にしまっている。
「あのジェスさん、これは?」
「さっきも言ったが、スペア、所謂回復薬だよ。」
「でもこれって…!」
「そう、夢魔の手だ。今の店は、夢魔の体を売っている。夢魔の体の欠損は時間をかけて夢の種子を取り込めば治るが、直ぐとなると他の夢魔の体を食らうことでしか治らない。あそこには、罪人連中が捕まっていて、バフィンはそいつらの体から商品を作ってるんだ。」
「でも、そんなのって!」
「ひどいと思うかい?でも、それで命を救われたホルダーが多くいる。それがわかっているから都市もこの商売を潰せない。表立っては都市は関与していないが、黙認している。最近は反発運動もあるみたいだが、その結果、優柔なホルダーが消え、夢の種子の収穫量が減ることをきっと彼らはわかっていないんだろうな。」
(開けるな)
脳裏にあの赤のカーテンの先で、カプセルに入って培養されている景色が不意に想像された。気持ち悪くなって、その場に崩れそうになる。ジェスはそんな僕の肩を支え言った。
「さぁ、エスタフの方はどうなってるかな?」
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バイアス亭:食堂
再開したエスタフは僕同様、ひどい顔をしていた。そして、なぜかライナスさんは肌がツヤツヤしている。目の前には、美味しいそうな料理が並んでいるが、僕らは一口も手をつけていない。
「どうしたの、クロードひどい顔だよ。」
「エスタフこそ、人のこと言えないだろ。…どうしたんだよ。」
ライナスの手には髑髏が握られており、嬉しそうにそれを眺めている。ジェスはというと、そんなライナスを無視して、コーヒーを飲んでいる。
「あの人に裏路地連れてかれて、変なものいっぱい並んでるやつ…」
「ああ、あれか」
僕はライナスの髑髏やその他の謎の人形を見て、何となくその場を想像する
「最初は面白かったんだけど、露店のやつとか色々…でも途中で変な女が出てきて、「私の腕入りませんか?…もう手首から先は売っちゃってないんですけど」って…」
どんどん顔が青ざめて行くのがわかる。歯も少し揺れているようだった。
「本当に手首から先がなかった…で、そこのマッドが」
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裏路地:
じっくりと腕を観察した後、徐に腕を掴んだ。
「もしかして、これ義手かな?左腕なら買うけど、どうする?」
「…え?ちょっとライナスさん?」
女の口角が上がり、仕方ないと言った表情になる
「残念、騙されなかったかぁ、いいよ左腕売ってあげる。生活に支障が出るから、手首から先だけになるけどいい?」
「ああ、それで構わないよ。」
ライナスがそういうと、女の懐へ盤絵を捩じ込む。女はそれを確認すると丸い腕輪のようなものを取り出して、左手首に通すとバチンッという音と共に手首が地面に落下した。赤い血のようなものがポタポタと地面に垂れる。
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バイアス亭:食堂
「ひどいなぁ、マッドだなんて。あんなのここでは普通のことなんだよ?」
「実際ホルダーの命には変えられないからな。かといって、こういう非道なことを都市が管理して運営するわけにもいかないから、バフィンみたいな裏のまとめ役とか、エスタフがみた闇市があったりするんだよ。」
「…奴隷制の名残ってやつですか?」
僕がそんなことを聞くと、ジェスはまたコーヒーを啜る。エスタフは興味なさそうに、机に伏しながら目の前の肉を食べるかどうかで格闘している。
「言いたいことはわかる。ただ、昔とは違うとは言わせてもらう。路地であったその女だって、強要されてやってるわけじゃない。お金を得る手段として、本人が納得して最適だからやってるんだ。それこそ、バフィンの店だって、荒くれ者、つっぱりを強制するために、それこそ犯罪者を限定にやってることだ。…必要なんだよ、そういうのも。口で言ってわからないやつにはトラウマでも何でもいいからわからせてやる。そうじゃなけりゃ。そいつはもう、駆除するしかないだろ。」
駆除という言葉に、心が動いたことがわかった。でも認めていいのだろうか?
エスタフは、思い切って口の中に肉を入れ、咀嚼している。段々と顔が美味しさで緩んでいるのがわかった。
「でも、あんな、許していい商売だととても…僕には思えないんです。」
「まぁ、あの路地裏の女の子とか、ホルダーもそうだし、基本は自分のことは自分で責任を取らなきゃいけないし、それをわかった上でやってると僕は思ってる。」
「責任が取れるなら何をやっても良いと?」
「極論はそうだね。夢の種子を得るために死ぬ覚悟があるなら、夢に潜ってもいい。壁をすぐに治せるなら、壁を壊してもいい。夢魔を蘇らせることができるなら、殺したっていい。」
その言葉に、唾をゴクリと飲む。エスタフも食べてる手が止まる。
「まぁ、今のは違うと言えば違うかな。殺されて「治りました。許してください」って言われて許す人なんていないしね。ただ、壁を壊したならその夢魔が補填しないといけない。他の人が補填するじゃダメなんだ。そうなったら、そいつはもう夢魔の社会の一員から完全に隔離されてしまう。」
「…犯罪者とか、責任から逃げる夢魔、責任を取れない夢魔は、誰かが代わりに責任を取らせてあげなきゃいけないってことですか?それが正しいと?」
「僕はそれが優しさだと思ってるよ。同じ夢魔として、同族としてね。」
机がトンッと叩かれるとジェスが立ち上がる。
「さて、おしゃべりはここまでだ。そろそろ、他の階層にも行くぞ。」
エスタフは一生懸命に口の中に食べ物を詰め込む。僕はというと、結局何も食べなかった。
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西暦2023年7月14日 朝2:00 (夢魔の世界では昼)
BUG:階層別エレベータ
天に伸びる4つの柱。階層別エレベータの前で僕らは、停止した。見ると2階層のエレベータからはもう何人か降りてきており、歳の頃からして、僕とエスタフと同じくらいの夢魔だった。
「この時間帯だと、2階層のホルダーは大体降りてくる。3階層から上は、もう少し時間がかかるだろうがな。それじゃ早速…2階層に」
ジェスがそういい、みんなでエレベータに乗り込もうとした時だった。アナウンスが響き渡る。
(ジェス・コウ、B級ホルダー。都市長からの呼び出しです。至急、都市長室までお越しください。繰り返します…)
「何だ、いきなり…」
ジェスはこちらを一瞥して、困ったように頭をかく。
「ああ、すまないが今日の案内はここまでだ。…ライナス、こいつらを正面入り口まで連れてってくれ。」
「わかったよ。」
「悪いな。」
そういうと、ジェスは来た道を引き返していく。エスタフが気になったようで、
食べ物片手にライナスに話しかける。…というかこいつ手にも持ってきたのか…
「ジェスさんどうしたの?」
「う〜ん、何だろうね。都市長の呼び出しってことは、悪夢関連とかかな?多分、悪夢の集合夢が出来たとか?」
「悪夢の集合夢?」
「そうだね、歩きながら話そうか。」
そう言って、ライナスたちは歩き出す。エレベータ付近には噴水があって、何人かのホルダーが淵に座り、待ち合わせをしているようだった。
「まず、クロード君、エスタフ君は悪夢に関しては理解しているね。」
「はい、受付の方が教えてくれました。」
「うん、聞いたよ〜。」
ライナスは手帳取り出して、何かを書き始める。歩きながら書くなんて、随分と器用だなと思いつつ、書き終わるのを待っていると
「はい、これ」
そう言ってメモをちぎって僕らに渡してくる。中には人が書かれていて、それぞれが想像し、モヤモヤがまとまっている。そして更に何か書いて漫画用にメモが渡されてきた
「複数の人が見る集合夢というのは、みんなが同じ夢を見ることだよね。で、悪夢の集合夢が通常の集合夢と何が違うかというと、夢の主人が複数人いるか、1人かの違いなんだ。例えば、アイドルのライブの集合夢があったとする。その中だと、みんなそれぞれが思うアイドルの見え方があって、それを繋ぎ合わせたものになる。例えば、Aの人はドームの右側しか認識できないけど、Bの人は左側だけ認識できる。これが歪に繋ぎ合わさって完璧なドームが出来上がる。Aの人だけだと、左側は欠けて、崩壊するし、Bの人だけでも同じだね。人数が多ければ多いほど、実際のライブの再現度は上がるわけだ。では、悪夢は?」
そうライナスは僕らに応えるように促してくる。
「そうですね、夢の主人は1人って話でしたし、ボロボロな集合夢?みたいな感じですかね。ところどころ穴が空いてるみたいな…」
「うん、惜しいね。エスタフくんはどう思う?」
「めちゃくちゃ強い敵が出てくるとか?あと、壁がボロボロしてそう。」
その答えに満足したように頷いて、ライナスは続けた。
「2人ともいい線行ってるね。集合夢の悪夢の場合、重悪夢って言うんだけど、夢の主人が悪夢そのものになるんだ。そして、夢の種子そのものと言ってもいい。そして、その共通の悪夢を見る人間はその夢の中に囚われるが、主人ではなく、ただ1人の主人に襲われる対象になる。全員の怖いと想像する能力を備えるわけだから、相当な強さになる。これはエスタフくんが正解だね。」
「全員狩られるとどうなるの?」
「その場合は、夢が閉じる。でも主人だけは夢から出られなくなっちゃうかな。それに悪夢が存在し続ける以上、何度でもこの集合夢に人が集まってきてしまう。」
「それは悪いことなんですか?」
「悪いことだね、言ってしまえば本来彼らから収穫できたはずの夢の種子を得られなくなってしまうわけだからね。しかも、悪夢はより大きく、どんどん強くなってしまう。だから、討伐隊が組まれてなるべく早く悪夢を終わらせる必要があるんだよ。ちなみに、この悪夢の夢の種子は形が決まっちゃうから、普通の種子としては使えないんだよね。」
「さっきの髑髏みたいに?」
「そう、その通り。」
エスタフの言葉に同意して、カバンからさっきの髑髏を取り出す。
「これは、悪夢から採れた夢の種子で、夢の主人に反応するようになってる。中々のレアものだよ。ただ、見たところ髑髏の半径50cmが索敵の限界ってことかな。」
「…狭っ」
「こんなものだよ。集合夢の呪物だともっとすごい物があるけどね。例えば…」
そう言って、また何か書き始めて、僕らに紙を渡してくる。雲のようなキノコの絵が描かれていた。
「それは、S級呪物だよ。サイズは僕らの背丈くらいで、根の部分を握ると半径50キロを爆発させて、使用者も死んじゃうイカれた呪物なんだけどね笑」
「…なんですか、その馬鹿げた呪物は…」
「能力は凄いんだけど。大抵、使い道がないんだよね。だから結局倉庫の奥にしまったままになってるね。加工して使う場合もあるけど、まぁ場合によるかな。」
エスタフが絵を見ながら、ライナスに話しかける。
「そのキノコって食べられるのかな?」
「う〜ん食べた人はいないかな。多分食べたら死ぬよ?」
「じゃあ、食べないほうがいいね。」
こいつ、今の聞いた感想がそれかよ。と心の中でツッコミを入れた。「おっ」とライナスが声を上げて、近くの屋台に向かっていく。僕らは駆け足でその後ろについていく。「3本下さい」と言うライナスに屋台の髭を生やした親父が、腕ぐらいの肉串を持ってライナス1本を渡す。
「ほら2人とも、BUGの名物、巨大熊の串焼きだよ。」
無口な親父から渡された串は、握り拳大の肉が3つほど刺さっている。…正直めちゃくちゃ重い…ライナスも両手で持ちながら…何かもう食らいついてる。
「美味しい!何このお肉初めて食べたんだけど!」
「喜んでくれて良かったよ。ジビエは都市内でしか美味しいものは食べられないからね存分に堪能していってね。」
食欲も戻ってきて、お腹も空いていたので、カップリと食いつくと、体に染みる野生味のある肉に、スパイスがよく効いていてめちゃくちゃ美味かった…。ミディアムくらい、血が滴る肉といった感じだ。
「…うまっ」
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(ごめん、もう少し書きます!)
どうでしょうか?お楽しみいただけましたか?気になるとこや質問があれば、この後書きでできるだけ話していきたいと思ってます。次は5話!1週間以内に書き上げるぞ!
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