ニンジン畑のハムスターライダー傭兵団
山岡咲美
本編
「全ハム突入!!!!!!!!」
一番隊の大型のハムスター、
「おおーーーーーーーーーーーー!!!!」
中型のハムスター、ジャンガリアンハムスター部隊を駆る二番隊と小型のハムスター、ロボロフスキーハムスターを駆る三番隊ハムスターライダー達が
「ハムステッド、心踊るなモグラ狩りは!!」
「ああ、ハムセイド兄さん、この辺りのニンジン畑からモグラを駆除出来れば報酬もたんまりだ」
ハムセイドとハムステッドの黒髪の中東系、オリエンタルハムスターテイマーノーム種の兄弟ハムスターライダーも、灰色に頭から黒っぽい一本ラインの入ったジャンガリアンハムスターを駆り、モグラトンネル用
彼らハムスターライダーはこのモグラに荒らされた人間の農家に雇われた用心棒であり今の主任務はモグラ狩りだった。
「ニンジン農家のジーさんバーさんも困ってる早くかたを付けるぞハムステッド」
「雇い主なんだから
「お前は真面目だなハムステッド」
「ハムセイド兄さんのせいで失業したくないだけだよ」
ハムセイド、ハムステッド兄弟にはこれは簡単な仕事の筈だった。
「ハムセイド兄さん二股だ」
「ハムステッド、俺は右お前は左を潰せ!」
ハムスターライダーの殲滅索敵とは迷路のようなモグラトンネルに潜むモグラを逃さない為に地上探査で発見した全てのモグラトンネルの出入口、モグラ塚から
「了解!!」
「俺たちの
ハムセイド、ハムステッドのハムスターライダー兄弟に限らずハムスターライダー達は自分達の勝利を疑ってはいなかった。
「なっ、なんだあれは?!!」
一人の名もなきハムスターライダーが叫び声をあげるとハムスターライダー達はパニックにおちいった。
「やっやめろ!! 引きずり下ろされる!!」
モグラトンネル内でハムスターライダー達が事態の理解も出来ずハムスターから引きずり下ろされて行く。
「不味い一匹じゃない!! 後ろをとられた!!」
モグラトンネルの暗闇からはハムスターライダー達の予想もしなかった攻撃が続いていた。
通常縄張り意識の強いモグラは単独でその巣たるモグラトンネルを掘るがこのニンジン畑のモグラトンネルには複数、いや、多数の生き物が生息していたのだ。
「モ、モグラじゃない、こいつらは!!」
ハムスターライダー達は前後をその生き物に囲まれ絶望した。
「伝令ーー!! 伝令ーーーー!!!!」
モグラトンネルの外で指揮を取るハムスターライダー傭兵団団長、ハムカッツェ・フォン・ヒマワリン団長の元に伝令の小型で大きな耳と長いしっぽで跳ね走る砂色のハムスター、カンガルーハムスターに乗った伝令ハムスターライダーが走り跳んで来た。
「ハムカッツェ団長!! ハムカッツェ団長!! この巣はモッ、モグラの巣ではありません!! ハダカデバネズミの巣であります!!!!」
「バカな!! この巣の形状はモグラの筈だ、ハダカデバネズミだと?!!!!」
「いえ、間違いありません、三番隊の隊長のハムリーナ・ハムスキー女史のハムスター、ロボロフスキーハムスターの
三番隊の隊長ハムリーナ・ハムスキー女史は生物学専攻の知性派ハムスターライダーであり、女史の駆る白いロボロフスキーハムスターのハム吉号はハムスターライダー傭兵団一番の嗅覚持ちハムスターだった。
「不味いぞ、ハダカデバネズミがモグラの巣を乗っ取ったのか!!」
確かにハムカッツェ・フォン・ヒマワリン団長もおかしいと感じていた、ヨーロッパモグラはミミズを主食とし、他にもムカデや昆虫などを食す肉食の
「ハムカッツ団長いかがいたします?!」
「伝令ハムライダー! 地上の杭打ち通信隊、パイルドライバー隊にこのメモを渡せ! 地下のハムライダー達に作戦の変更を伝えるのだ!!」
「イエスハム!! ハムカッツ団長のメモをパイルドライバー隊に渡します!!」
伝令ハムスターライダーは素早い敬礼と共に風のようにパイルドライバー隊へと跳び駆けていった。
カン、カン、──、カン、──、カン、カン、──、カン、──、
カン、カン、──、カン、──、カン、カン、──、カン、──、
「ツーマンセルの抜刀戦?? 敵はハダカデバネズミ??!!」
兄、ハムセイドは不味いと思った、その名の通り全身に毛のない上下から大きな二本づつ四本の前歯のあるネズミ、ハダカデバネズミは平均七十匹くらいの群れ、コロニーを作ってアリのような統率の取れた組織を持つ危険な生物だ。
「ハムセイド兄さん! 杭打ち通信だ!!」
杭打ち通信とはパイルドライバーで地中に深く差し込まれた杭をハンマーで叩く事によりモールス信号をもちいて地下にいる仲間に命令を伝達する通信システムだ。
「ハムステッド良く合流した、お前は左前に出ろ、俺は後ろと右の警戒をする!! 二人で組んでハダカデバネズミを狙うぞ!!」
「わかったハムセイド兄さん!」
兄ハムスターライダー、ハムセイドは弟のハムステッドのハムスターを左前に出す、兄としては前衛をこなしたいところだが弟、ハムステッドの特性を考えると自分が右後衛に付き、右と後ろの警戒をするのが正しい選択だった。
「頼むぞハムステッド」
そう言うと兄、ハムセイドはハム上槍ショートランスを、ハムスターの
「任せてハムセイド兄さん」
そして弟、ハムステッドも同じく片刃曲刀、シャムシールを左手で抜いた、ハムステッドは左効きでありその事がこの二人のハムスターライダーを最強のコンビ足らしめていた、トンネルでは通常利き手側ではない左に注意するが基本なのだ。
「テイヤーーーー!!」
「ソイヤーーーー!!」
二人のハムスターライダーがハダカデバネズミの巣とかしたモグラトンネルを駆け抜ける、ハムスターライダーの多くが突く事も可能な反りの少ない
***
「ハムの統率が戻り始めたか、流石ハムカッツェ団長だ」
三番隊隊長ハムリーナ・ハムスキー隊長はヒマワリの花びらで飾られた兜を外しその赤い髪の三つ編みを後ろでお団子にまとめ近接戦闘用スタイルをとりつつパイルドライバー隊のモールス信号に耳をすませた、そしてトンネル戦線が安定を取り戻しつつあると感じると愛ハムの白いロボロフスキーハムスター、ハム吉号にガラスの筒の中の綿に染み込ませた匂いを嗅がせた、それはハダカデバネズミの女王に特有の匂いを生物学者でもある彼女が保存していたものだった。
「行けハム吉号!! 我ら三番隊は女王ハダカデバネズミを狙うぞ!!」
そう言った三番隊隊長ハムリーナ・ハムスキーは小回りの邪魔になるショートランスをあっさりとモグラトンネルに捨て置き鋭く光る
***
「ハムリーナ隊長ご無事ですか?!」
ハムセイド、ハムステッドの兄弟ハムスターライダーがそこに駆けつけた時には既に戦いは終わっていた、女王ハダカデバネズミの眉間を一撃で仕留めたレイピア使い、三番隊隊長ハムリーナ・ハムスキー女史が歴戦の部下達と巨大な女王ハダカデバネズミとそれを取り囲む様に女王ハダカデバネズミを守り続け命を燃やした兵隊ハダカデバネズミに兜飾りにしていたひまわりの花びらを捧げともらいをしていた。
「我らハムスターライダー傭兵団はどんな命にも敬意を払うのだよ……」
そう言って笑ったハムリーナ隊長とその部下ハムスターライダー達はヒマワリの花びらのなくなった兜を胸にやり、静かに祈った。
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