世界は広く血族の女盗賊は旅に出る。

霜花 桔梗

第1話 旅立ち

 バルカル共和国の古都、リズム。革命前の旧帝国時代の首都であった都市である。


 そこには十七歳になった、わたしが住んでいた。


 名前は『ブルー・ザ・イスマール』だ。


 自分で言うのもなんだが、その容姿は可憐で長いブロンドの髪に引き締まった体は誰もが振り向くのであった。


 少し昔話をしよう、わたしは小さな村に住んでいた、そこは名前すらない小さな村であった。また、そこは血族と呼ばれる存在の村であった。そして、十歳の時に村はゴブリンの群れに襲われたのだ。血族はその持つ力ゆえに狙われやすく、防御に力をつくして隠れ住むことが多かった。


 しかし、ゴブリンの群れに簡単に陥落した。


 燃える業火の中を逃げる際に双子の妹のアリサと生き別れた。わたしは全てを失い。流れ流れてリズムに着いた。そこで、女盗賊のベルサーに拾われた。子供のいないベルサーはわたしに短剣の剣術を身に着けさせて、生きるすべを教えてくれた。

現在は盗賊のギルトで幹部をしている。そのギルドの歴史は古く多くの大盗賊を生んでいた。


 そう、リズムは古都なので昔からの金持ちが多く、盗賊には生きやすい環境であった。わたしは短剣使いの女盗賊として、それは恐れられていた。


 そして、わたしはいつも三日月銀のペンダントを首にかけていた。この三日月銀のペンダントは血族の証であり、焼け落ちた村に秘宝として昔から伝わったモノであった。しかし、銀としては輝きが鈍いのでお金に変える者は居なかった。


 そう、この三日月銀のペンダントは二つあり、行き別れた双子の妹が持つ物と対になるのである。


 夜になると、半地下のある三階建の自宅にて年頃の女子にはシンプルな部屋の中で三日月銀のペンダントと共にいた。死んだ父親は『この三日月銀は旧世界が滅びた頃から伝わる秘宝だ』とよく言っていた。ぬいぐるみの一つも買えば、孤独を癒せるのに、わたしは窓際に座り月明かりに照らされる三日月銀のペンダントを眺めるのであった。


 そして、ある日、旅の商人に金のブレスレットを売った時である。


「お前さん、その三日月銀のペンダントに見覚えがあるよ。酒場で歌う、旅の歌姫だよ。何より、お前さんにそっくりだった」


 それは、生き別れた、妹の手がかりであった。旅の歌姫か……色んな街を探していれば見るかるかもしれない情報であった。


 わたしはその夜にベルサーに相談した。


「探しに行きな、わたしも天涯孤独でね、盗賊仲間しか心を許せる者がいない。だから、血の繋がった者が居るなら会いにいきな」


 ベルサーの進言にわたしは迷った、盗賊が旅の歌姫の妹に会いに行く?


「少し、考えさせて……」


 そう言うとわたしは自室に籠った。そして、夜になるとやはり三日月銀のペンダントを月明りにあててみる。三日月銀の光は弱く宝石とは言えないモノであった。

しかし、その光は心に沁みわたり、わたしは癒されていた。妹のアリサが三日月銀を大切にしているのなら。会えそうな予感がした。


 わたしは決意した。生き別れた妹を探す旅に出る事だ。先ずはお金だ、気楽な盗賊を辞めて剣術を生かせる傭兵になろう。それから半年、旅の資金も貯まった。

この古都リズムともしばしのお別れだ。盗賊仲間やベルサーに挨拶をして旅に出るのであった。

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