ゾンビの脳ミソ

野口マッハ剛(ごう)

ゾンビの脳ミソ

 ヒタヒタと足音が聞こえる。ドアの向こうにはゾンビが一体居る。部屋の中には青年が。逃げ遅れた青年はドアを押さえるようにして息を必死に殺している。どうする? まだ逃げられそうだ、そう青年は迷っている。街にゾンビが溢れかえっていることを知ったのはテレビでだ。青年は引きこもりだった。部屋の外の様子はわからないが、きっと家族は青年を置いてきぼりにして逃げたと思われる。青年は部屋にあったハンマーを片手にゾンビと戦うか悩んでいる。こんなことは映画の中だけだと考えていた青年。ゾンビの足音が止まった。今か、今脱出した方がいいのか? 青年がそう考えると同時にゾンビの唸り声が聞こえる。部屋の外からドンドンとドアを叩く音とゾンビの雄叫びが聞こえる。ゾンビの足音が集まっているようだ。次第にドアを叩く音が強くなっていた。青年はドアを離れて窓から飛び降りようかと思ったが、ここはマンションの六階、青年は見下ろしてゾンビが地面で蠢いているのを見て諦める。青年は死を覚悟した。ゾンビが溢れているこの世界を最後に恨んで拳銃を自らの口の中に狙いを定める。しかし、引き金が引けない青年。ドロリとした感覚が青年を襲う。部屋の中にゾンビの匂いが鼻を刺激する。とんでもない匂いである。すると外から拳銃の発砲音がする。どうやら助けが来たようだ。部屋の中にゾンビがドアを破って侵入して来る。青年は拳銃を構えてゾンビの脳ミソ目掛けて発砲した。生きるために。

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