ダイバー・ゴーレム

超新星 小石

第1話 地球は水浸しになりました

 時は二〇五〇年。

 木星の第二衛星である水の惑星エウロパが突如として軌道を変え地球に衝突。

 地球の海の二倍以上もの水を内包するエウロパとの衝突により地上は水没した。

 人類はかつては山だった場所や人工島での生活を余儀なくされたのだった――――。



 世界が水没して数年後。

 ここはかつて日本と呼ばれていた島国の上に浮かぶ人工島、サンクチュアリ。人工島といっても島の面積は半径二十メートルほど。島というよりも小屋が乗っている大きなイカダのようなものだ。



 白衣を羽織った少女が四足歩行の多目的労働プロレタリーロボットとともに島内を散歩していると、一人の男が島の南にある漂流物回収ネットにひっかかっていることに気がついた。



 少女はロボットに命令して男をネットから引き上げさせるも、男の右腕はもげており、顔も肉食の魚にかじられたのか表情が判別できないほど損壊していた。かろうじて呼吸しているものの先は長くないことは明白だった。少女は男のあまりにも惨い状態に眉をひそめた。



 少女は男の固く握りしめられた左手が気になり一本ずつ指を開いてみると、男の手から銀色のペンダントが滑り落ちて、島の底を支える縞鋼板にからん、と乾いた音を立てて転がった。



 少女はペンダントを拾ってしばらく無言のまま見つめていたが、ほどなくしてロボットに瀕死の男を背負わせ、島の中央にある研究所へと帰っていった――――。

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