第85話 相乗効果
作戦決行の日、ムツキは2人でワーウルフの軍勢が迫り来る場所に向かっていた。
2人と言ったのは、肩にちょこんと腰掛けているピリカの事であるか
ここにくる前、エルフの隊長達とは挨拶をしたのだが、やはりエルフと言っても物語のイメージとは違い、それぞれに性格があるのは人間と同じであった。
基本のステータスは、人の魔者と呼ばれるだけあって高いので、人で言う貴族の様に見下していそうな人もいれば、丁寧に挨拶してくてた人もいる。
やはり、種族ではなく個人で見る事は大切である。
ニコラスの騒がしいイメージからしたら、物語の高潔なエルフのイメージは飛んでいってしまうのだし。
そんな事を考えて居ると、ムツキの前にはワーウルフの軍勢が迫って来ていた。
その様子を見て、ムツキは内心ほっとした。
自分勝手な話なのだが、ワーウルフの姿を心配していたのだ。
犬耳で、顔が人と同じの獣人の姿であれば、何となく後ろめたい。
オークの様に顔が獣なら、化け物として躊躇なく倒すことができる。
自分勝手な話だが、心理的には重要な事であった。
一度人を殺している人間が何を言っているのかといわれそうだが、すぐに気持ちの整理がつくわけではない。
幸い、ワーウルフは言うならば狼人間と言った見た目で、ムツキの感情的には魔物とさして変わらなかった。
ペトレを従える時にレベルを上げたのと同じ様に、自分の大切なものを守る為に必要な事だからと、半ば作業の様に魔法を使う。
ムツキが魔法を使うと同時に、肩に腰掛けていたピリカから声が聞こえた。
『ピリカも手伝ってあげる』
ムツキが魔法を使う為に前にかざした手に、銀色の魔法陣が重なった。
迫り来るワーウルフ達の側が、キラキラと銀色の粒子が煌めいたかと思うと、ムツキの想像の数倍の爆炎魔法が連鎖爆発を起こした。
その爆発にのまれて、視界を埋め尽くすほどのワーウルフ達は、死体すら残す事なく消えてしまった。
想像以上の爆炎魔法に、えぐれて焼け野原になった光景をみて、ムツキは森の外で使ってよかったと胸を撫で下ろす思いである。
勿論森の中で火魔法系統の魔法を使う様なバカな真似はしないのだが。
『いきなりはビックリしますから事前に言ってくださいね』
ムツキは、念話でピリカにそう言って注意するのだが、ピリカはピリカでこんな威力の魔法になると思っていなかった様で開いた口が塞がらない様子である。
『わ、わかったわ。美味しい魔力だと思ってたけど、こんな事になるなんて……これからはちゃんと相談するわ』
ピリカとの約束も終わり、全滅させた為、森に戻ろうかと後ろを振り向くと、後ろで防衛線を用意していたエルフ達が、目が飛び出さんばかりに目を開いて呆然とコチラを見ていた。
「あ、あの、終わりましたけど」
ムツキの言葉に対して、すぐに返事の声は返ってこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます