第84話 部隊長達
「本当に、大丈夫なのでしょうか、イニーナ」
「分かりません。しかし、オサが許可した以上、ある程度の信頼ができるのでしょう。私達はあの人族を見極め、彼が道化師だった時に森を守れる様にしなければなりません」
話をしているのは、エルフの戦士として、部隊を率いる隊長の位置にあたる人物であった。
イニーナとシクサムそして無言で話を聞いているハニートの3人は、ムツキが突破された時の防衛線について話し合っていた。
「だがまあ、あの人族の実力も見どころじゃ無いか」
3人の話に入ってきたのはハムニストであった。
ハムニストはエルフ族では珍しく好戦的で、今回の戦争に乗り気な人物である。
「まあ人族に何ができるって話だがな、ナーラ様の推薦だから仕方なくって所か」
「ハムニスト、ナーラ様やオサの侮辱は許さんぞ?」
ハムニストの意見に反論したのはイニーナであった。
武力を1番としてエルフの細い線の体に似合わないバスターソードを振り回すハムニストと、知略を駆使して相手を誘い込み百発百中の矢で相手を仕留めるイニーナは犬猿の仲である。
2人は、男女の派閥のリーダーである事からも、引く事ができないのもあるのだろうが。
「まあまあ、今はオサがハジ様に話をしにいっている事ですし、戦争をせずに終わればそれはそれでいいじょないですか、ね、ハニート」
2人を宥める様にイクサムに話を振られたハニートは無言で頷いた。
「俺は戦争がしたいがな、ワーウルフの雑魚どもが何匹かかってこようが取るに足らんだろう」
ガッハッハと笑いながら好戦的な意見を言うハムニストに、イニーナはため息を吐いた。
戦争などは起こらない方がいい。戦争になれば少なくない同胞が命を落とすだろう。
これだからハムニストとは意見が合わない。
目の前の脳筋の男よりも、ナーラ様が信頼し、オサが認めたあの男が、話通りの男である方が好ましい。
あのニコラスが推奨した男と言うのも気になるところだ。
しかし、それを信頼しきって押し切られたとあっては笑い話にもならない。
とりあえず、脳筋のハムニストの部隊はいつもの様に最前線に、そして、突破された時にどうやってワーウルフを追い込んでいくのかを、ハムニストの耳障りな声に舌打ちをしながらも、考えるイニーナなのであった。
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